イスラエル・ハマス紛争開始後の72時間:TelegramにおけるハマスとPIJの動き | Codebook|Security News

セキュリティ/サイバーインテリジェンス最新トレンドをご紹介

Codebook|Security News > Articles > Threat Report > イスラエル・ハマス紛争開始後の72時間:TelegramにおけるハマスとPIJの動き

イスラエル・ハマス紛争開始後の72時間:TelegramにおけるハマスとPIJの動き

イスラエル・ハマス間の紛争開始から数日間における、ハマスとPIJのコミュニケーションと戦略を促進したTelegramの役割を分析します。

*本記事は、弊社マキナレコードが提携する米Flashpoint社のブログ記事(2023年10月11日付)を翻訳したものです。

目次

Telegram:現代の戦争に欠かせない通信経路

10月7日:ハマスによる急襲

10月8日:暴力の激化

10月9日:戦場の拡大

Telegram:現代の戦争に欠かせない通信経路

7億人以上ものユーザーを抱えるメッセージプラットフォームであるTelegramは、ハマスとパレスチナ・イスラミック・ジハード(PIJ)にとって極めて重要なコミュニケーションハブとしての役割を果たすようになっています。その強固なプライバシーおよび暗号化プロトコルは通信を保護すると同時に、過激派グループやサイバー犯罪者へ密かに作戦を実施できるような場を提供するものでもあります。こうした背景から、オープンソースインテリジェンス(OSINT)においてTelegramは欠かすことのできない存在であり、同プラットフォームからは、現在ハマス・イスラエル間で起こっている軍事衝突のような、世界各地における現在進行中の事象をリアルタイムで理解するための手がかりが得られます。Telegramはまた、多面性を孕む現代の戦争について把握する上で、インテリジェンスに携わる人々にとってなくてはならないツールとなりつつあります。地域益を重要視している組織は、自組織にリスクをもたらし得る弱点を把握したり、紛争の複雑性に対応したりする上でTelegramが欠かすことのできないアセットであることを認識すべきです。

紛争開始後から72時間におけるハマスとPIJのTelegramアクティビティ

ロシア・ウクライナ戦争やハマス・イスラエル間の紛争をはじめとする最近のグローバルな紛争の文脈において、Telegramのようなプラットフォームは、リアルタイムで最新情報を伝え、戦争犯罪に該当し得る行為を記録し、また政府による検閲の中で反戦論を訴えるための場を提供するなど、その重要性を示してきました。Telegramは言論や戦略に影響を与えつつ、組織やインテリジェンス担当者に戦況の見極めや予測を行うためのデジタル戦の場を提供するなど、現代の戦争においてその重要性を高めていることが、上記いずれの紛争からも浮き彫りになっています。

10月7日:ハマスによる急襲

このデジタルな戦場は、現代の紛争における言論や戦略を形成する一方で、10月7日に突如として現実世界と衝突しました。つまり、ハマスが仮想的に行っていた指揮統制が、イスラエルに対する実体的で破壊的な奇襲攻撃へと姿を変えたのです。

ハマスの兵士らは10月7日、イスラエルに対して予期せぬ壊滅的な攻撃を仕掛けました。この結果数百人の死傷者が出て、多くの人が人質として捕えられています。2,000発以上のロケット弾がイスラエルに向けて発射されて多数の死傷者を出し、ネタニヤフ首相が軍と予備軍を動員してハマスに宣戦布告する事態となりました。この攻撃は、1973年にエジプトとシリアがイスラエルへの攻撃を開始して第四次中東戦争が勃発した日から50年後のほぼ同じ日に、ユダヤ教の祝日「シェミニ・アツェレット」の最中に行われ、イスラエルへ不意打ちを喰らわせました。

この攻撃で数百人が死亡、500人以上が負傷し、イスラエル兵が拉致されて車両が乗っ取られる中、ヒズボラはハマスの襲撃を祝福しました。そんな中、駐エルサレム米国大使館はアラートを発出し、職員の避難プロセスを開始しました。一方で兵士たちはさまざまな手段を用いてガザ地区とイスラエルの境界を越えており、ハマスのムハンマド・デイフ司令官はパレスチナ人とアラブ人に対して軍事作戦への参加を呼びかけたことから、紛争がより広範囲に及ぶことへの懸念が高まりました。

世界標準時の午前5時30分(日本時間の14時30分)頃、ハマスはTelegramの主要チャンネルの1つに投稿し、アル・カッサム旅団の総司令官が作戦「アルアクサの洪水」の開始とイスラエルへの5,000発以上のロケット弾発射について発表した旨を伝えました。そしてその直後の現地時間午前6時30分ごろ、エルサレムで攻撃を知らせる空襲警報のサイレンが鳴り響き、市民への避難指示が行われたと報じられています。

「アルアクサの洪水」作戦の開始を発表するハマスのTelegram投稿(画像入手元:Flashpoint)Hamas Telegram post announcing the start of Al-Aqsa Tufan (Image: Flashpoint)

このメッセージは、10月7日にハマスのメインTelegramチャンネルで送信された1,145通のメッセージのうちの1通です。なお、その前日に同じチャンネルで送信されたメッセージの数は373通だったので、7日に突如3倍以上へ増加したことになります。

10月8日:暴力の激化

この日もイスラエルとハマス双方からの攻撃と反撃が続き、紛争が激化します。両陣営の死者数は急増し、この状況に国際的な注目と非難が集まります。また、ハマスがイスラエル人の人質を処刑するという内容の脅迫を発し、国際社会の怒りがさらに高まります。米国は、この攻撃で米国人数名が死亡したことを確認し、イスラエルへの揺るぎない支持を表明しました。さらに、さまざまな国や国際的指導者がこの暴力を非難し、イスラエルとの連帯を表明し続けています。

10月8日、パレスチナ・イスラミック・ジハード(PIJ)が、「アル・カッサム旅団の兵士を支援し、兵器を供与するためにアル・クッズ旅団の精鋭が国境に入っている」とTelegramに投稿(画像入手元:Flashpoint)

日曜日(8日)には、Telegram上でPIJとそのフォロワーの間で1,129件の投稿が取り交わされ、上記のようなメッセージで襲撃の最新情報が共有されました。

10月9日:戦場の拡大

この日、紛争は新たな局面を迎えます。レバノンからイスラエルに向けてロケット弾が発射され、イスラエル軍がレバノン領に報復を行ったのです。米国は攻撃で死亡した米国民の数を最新の数字へと更新し、ハマスが捕らえた人質に米国人が含まれていることを認めました。イスラエルのガラント国防相は、ガザ地区を「完全包囲」するよう命じ、イスラエルへもたらされるいかなる脅威も排除することを誓い、現在進行中の攻撃に対して強固かつ制限なしに対応すると約束しました。

ハマスの主要Telegramチャンネルにおける、アル・カッサム旅団のアブ・オバイダ報道官の動画へのリンクが貼られた投稿(画像入手元:Flashpoint)

月曜日(9日)を通して、ハマスとPIJのTelegramのアクティビティは前日に比べてほぼ半分に減少しました。イスラエルとハマスの紛争が始まってから72時間で、Flashpointは、ハマスとPIJがそれぞれの主要チャンネルで共有したTelegram投稿を合計5,472件観測しました。