
昨今、情報漏えいやサイバー攻撃に関するニュースが増え、取引先からセキュリティ体制について確認される場面も珍しくなくなりました。
その影響もあり、ISMSやPマークの取得を検討し始める企業は年々増えています。
一方で、ISMSとPマークの違いが整理できないまま、自社に合うのはどちらか、取得に見合う効果があるのか判断できず、検討が止まってしまうケースも少なくありません。
この記事では、ISMSとPマークの違いを比較表と具体例で整理し、選び方の考え方、取得のメリットと注意点、取得までの基本的な流れを解説します。
- ISMSとは
- Pマーク(プライバシーマーク)とは
- ISMSとPマークの比較表
- 適用範囲・保護対象の違い
- 規格・審査機関の違い
- 運用・更新の違い
- 費用と取得期間の違いの目安
- よくある取得パターン
- 両方取得した方がよいケース
- 判断に迷うときのチェックポイント
- 判断のためのフローチャート
- 取得のメリット
- 取得のデメリット・注意点
- 認証取得までのステップ
- 取得後に求められるPDCAサイクル
ISMS・Pマークそれぞれの基本を確認

ISMSとPマークは、どちらも情報管理に関する認証制度ですが、守る対象と目的が異なります。
まずはそれぞれの基本を確認しておきましょう。
ISMSとは
ISMSとは、Information Security Management System(情報セキュリティマネジメントシステム)の略称です。
ISMSは個人情報に限らず、事業に関わる情報資産全体を対象にします。
たとえば、以下の情報資産が対象です。
- 技術資料や設計書
- 契約情報
- 社内の業務データ
どの情報にどのようなリスクがあるのかを整理し、対策を決め、運用と見直しを続けていくという「リスクベースで改善を回す仕組み」が特徴です。
国際規格に基づくため、法人向け取引や海外との取引がある企業で選ばれやすい傾向があります。
ISMSの詳細な進め方や要求事項は、以下の関連記事で解説していますのであわせて読んでみてください。
Pマーク(プライバシーマーク)とは
Pマークとは、プライバシーマーク制度の略称で、個人情報を適切に取り扱っている事業者であることを示す日本国内の認証制度です。
Pマークは以下のような国内での認知度が高く、個人情報を多く扱う事業において、対外的に分かりやすく信頼性を示したい場合に検討されやすい認証です。
- 顧客情報
- 会員情報
- 従業員情報
JIS Q 15001に基づいて運用されており、個人情報保護マネジメントシステムの構築と運用状況を第三者が評価し、基準を満たした事業者に付与されます。
Pマークの詳細な要件や取得方法は、以下の関連記事で解説しています。あわせてご覧ください。
ISMSとPマークの違いを詳しく比較
ISMSとPマークは、守る対象や運用の前提が異なります。
結論として、ISMSは情報資産全体の管理、Pマークは個人情報保護の証明に強みがあります。
まず全体像を比較表で確認し、そのあと重要なポイントごとに詳しく見ていきます。
ISMSとPマークの比較表
| 項目 | ISMS | Pマーク |
|---|---|---|
| 制度の位置づけ | 情報セキュリティ全体を管理する仕組み | 個人情報保護に特化した認証制度 |
| 代表的な管理組織 | 情報マネジメントシステム認定センター(ISMS-AC) | 日本情報経済社会推進協会(JIPDEC) |
| 規格 | ISO IEC 27001(国際規格) | JIS Q 15001(国内規格) |
| 守る対象 | 情報資産全般(個人情報、業務情報、技術情報など) | 個人情報のみ |
| 適用範囲 | 組織、事業、サービスなど柔軟に設定可能 | 原則として会社全体 |
| 主な取得目的 | セキュリティ体制の信頼性向上、BtoB取引対応 | 個人情報の適切な取り扱いの証明 |
| 更新・審査 | 毎年審査、3年ごとに更新 | 2年ごとに更新審査 |
| 向いている企業例 | クラウド事業者、BtoB企業、海外取引あり | BtoC企業、個人情報を多く扱う事業 |
適用範囲・保護対象の違い

ISMSは、適用範囲内の情報資産全般が対象です。
個人情報だけでなく、設計資料や契約情報、営業資料、システム構成情報など、事業に関わるあらゆる情報を守る枠組みとして設計できます。
適用範囲を事業単位やサービス単位に絞ることも可能なため、段階的な導入も検討可能です。
一方、Pマークは、法人内で取り扱う個人情報が対象です。
顧客情報だけでなく、従業員情報や採用応募者情報、取引先担当者の連絡先なども含まれます。
個人情報以外の機密情報(営業秘密や技術資料など)は、制度の直接的な対象ではありません。
規格・審査機関の違い

ISMSは国際規格 ISO/IEC 27001 に基づく認証です。
海外企業との取引やグローバル基準での説明が必要な場面でも活用しやすい点が特徴です。
審査は、認定を受けた審査機関が実施します。
Pマークは国内規格 JIS Q 15001 に基づく国内の制度です。
制度はJIPDECが運営し、指定機関を通じて審査が行われます。
国内での認知度が高く、「個人情報を適切に扱っている企業」という分かりやすい評価に繋がります。
運用・更新の違い

ISMSは毎年の維持審査、3年ごとの更新審査があり、継続的なリスク評価と改善活動が前提になります。
範囲を絞れる分、設計は柔軟ですが、マネジメントサイクル(PDCA)を回し続ける体制が必要です。
対してPマークは2年ごとの更新が行われます。
個人情報の取り扱いについて、定められた手順やルールが守られているかが重視されます。
全社適用が前提のため、部署ごとの例外を設けにくい点が特徴です。
費用と取得期間の違いの目安
取得コストや期間は、規模や対象範囲、外部支援の有無で大きく変わります。
一般的にはISMSのほうが設計要素が多く、負荷が高くなりやすい傾向があります。
期間の目安として、ISMS・Pマークともに6ヶ月年から1年程度進められるケースが多く見られます。
どちらも取得後に運用コストが継続して発生するため、取得時点だけでなく運用体制も含めて検討することが重要です。
よくある取得パターン
BtoB取引やクラウドサービス、システム開発など、技術情報や顧客企業の機密情報を扱う企業では、ISMSが選ばれやすい傾向があります。
一方で、会員情報や顧客情報などの個人情報を大量に扱うBtoC事業では、Pマークが選ばれることが多くなります。
BtoB向けにクラウドサービスやシステム提供を行いながら、同時にエンドユーザーの個人情報も扱う事業では、ISMSとPマークの両方を取得するケースもあります。
ISMSとPマークは、優劣の関係ではありません。
- 自社が主に守るべき情報は何か
- 取引先から何を求められているか
- 継続的に運用できる体制があるか
大切なのは、これら3点を整理したうえで選ぶことです。
ISMSとPマークのどちらを取得すべき?
ISMSとPマークは、どちらが優れているかで選ぶものではありません。
重要なのは、自社のビジネス形態と、扱っている情報の種類です。
大手企業との取引やIPOを見据える場合
→ ISMSの取得を視野に入れる
国際規格であるISO/IEC 27001に基づく認証は、説明力が高く、BtoB取引や上場準備の場面でも評価されやすい傾向あり。
法人向け取引が中心で、技術情報や業務データ、顧客企業の機密情報を扱う場合は、情報セキュリティ全体を管理できるISMSが向いています。
クラウドサービスやシステム開発を行う企業では、取引条件としてISMS取得を求められるケースもあります。
個人情報保護の整備を優先したい場合
→ Pマークから着手する
全社的に個人情報管理ルールを整備することは、組織基盤づくりとして有効。
一方、一般消費者向けの事業で、顧客の氏名や連絡先などの個人情報を多く扱う場合は、Pマークが適しています。
国内向けに分かりやすく信頼性を示したい場合には、Pマークが選ばれやすい傾向があります。成長段階の企業では、将来の事業展開も考慮が必要です。
両方取得した方がよいケース
法人向けサービスを提供しつつ、エンドユーザーの個人情報も扱う事業では、ISMSとPマークの両方を取得するケースがあります。
たとえば以下のような事業が該当します。
- BtoB向けクラウドサービスを提供している
- 企業の機密情報を扱う一方で、エンドユーザーの個人情報(会員情報等)も管理している
このような事業では、それぞれ以下の役割分担が可能です。
情報資産全体を管理する
個人情報保護への取り組みを明確に示す
取引先企業と利用者の双方に安心感を提供できる点がメリットです。
ただし、運用負荷や審査対応のコストが増えるため、事業フェーズや社内体制を踏まえて段階的な取得を検討するのが現実的です。
判断に迷うときのチェックポイント
迷った場合は、次の3点を整理してみてください。
自社の現状と将来像を踏まえ、無理なく運用できる認証を選ぶことが、継続的なセキュリティ強化につながります。
判断のためのフローチャート

ご参考までに、どちらを取得すべきかを判断するための簡易的なフローチャートを作成しました。
取引形態や扱う情報の種類、今後の事業展開を軸に、ISMSとPマークのどちらを優先すべきかを直感的に確認できます。
最終的な判断は個別事情によりますが、検討の出発点として参考にしてみてください。
フローチャートでは、ISMSとそのアドオン認証(ISO/IEC 27017 など)を中心に整理しています。
一方で、海外企業との取引では、SOC2レポートによるセキュリティ保証を求められるケースもあります。
詳しくは以下の記事もあわせてご覧ください。
ISMS / Pマーク取得のメリット・デメリットと注意点
ISMSやPマークの取得は、情報セキュリティや個人情報保護について、一定の管理水準に達していることを第三者に示す手段です。
取引先からの信頼向上につながる一方で、取得や維持にはコストや運用負荷が伴います。
| メリット | デメリット・注意点 |
|---|---|
| 情報セキュリティや個人情報保護について、一定水準の管理体制が整っていることを第三者に示せる | 審査費用やコンサル費用など、取得時のコストが発生する |
| 取引先からの信頼が向上し、大手企業との取引や入札条件を満たしやすくなる | 更新審査、内部監査、教育などの運用コストが継続的にかかる |
| ルールや運用が整理され、情報の扱いが属人的になりにくくなる | 規程整備や運用確認などの対応が増え、社内の業務負荷が高まる |
| 情報セキュリティリスクを把握しやすくなり、事故やトラブルの予防につながる | Pマークは全社適用が前提のため、個人情報を扱わない部署にも対応が必要 |
| ISMSは国際規格のため、海外取引やグローバル展開で有効 | ISMSは運用が形骸化すると、負担だけが残る可能性がある |
| Pマークは国内での認知度が高く、日本市場で分かりやすい信頼指標になる | 取得自体が目的になると、実効性のあるセキュリティ強化につながらない |
取得のメリット
最大のメリットは、対外的な信頼性を高められる点です。
ISMSでは情報セキュリティ全般、Pマークでは個人情報の取り扱いについて、管理体制が整っていることを示せるため、取引先からの評価につながります。大手企業との取引や入札では、認証取得が実質的な条件となることもあります。
社内面でも効果があります。
規程やルールを整備し運用を続けることで、情報の扱い方や業務フローが整理され、属人的な運用を減らせます。
ISMSでは情報資産全体のリスクを見直すきっかけになり、Pマークでは個人情報の取得や管理、委託先管理が明確になります。
また、ISMSは国際規格のため海外取引やグローバル展開で有効です。
Pマークは国内での認知度が高く、日本市場では分かりやすい信頼指標になります。
取得のデメリット・注意点
一方で、取得と維持には負担があります。
審査費用やコンサル費用に加え、更新審査や内部監査、教育などの運用コストが継続的に発生します。
企業規模によっては負担が大きく感じられることもあります。
また、社内業務が増える点にも注意が必要です。規程整備や記録作成、運用確認などが日常業務に加わります。
Pマークは全社適用が前提のため、個人情報を扱わない部署にも同じルールが求められ、効率が下がると感じる場合があります。ISMSも、形だけ取得して運用が追いつかないと、負担だけが残る結果になりかねません。
そのため、ISMSやPマークは「取れば安心」ではなく、自社の事業内容や取引先の要件、運用に割けるリソースを踏まえて、本当に必要かを見極めたうえで取得を判断することが重要です。
認証取得のステップとPDCA
ISMSやPマークは、取得して終わりの制度ではありません。
一定のルールを定め、それを継続的に運用し、見直し続けることが前提となっています。
そのため、認証取得までの流れと、取得後に求められるPDCAの考え方をあらかじめ理解しておくことが重要です。
認証取得までのステップ

ISMSやPマークの取得は、いくつかの工程を段階的に進めていきます。
取得後に求められるPDCAサイクル

ISMSやPマークは、取得後も継続的な運用と見直しが前提となる認証です。
その中心となる考え方が、PDCAサイクルです。
PLAN 計画
情報セキュリティや個人情報保護に関する方針や目標を定めます。
事業内容の変化や新しいシステム導入があれば、リスクやルールもあわせて見直します。
DO 実行
定めたルールに沿って、日常業務を運用します。
アクセス管理や情報の取り扱い、委託先管理などを、特別な作業ではなく通常業務として行います。
CHECK 確認
内部監査や点検を通じて、運用状況を確認します。
ルールが守られていない点や、現場で無理が生じている部分を洗い出します。
ACT 改善
確認で見つかった課題をもとに、規程や手順を改善します。
運用しにくいルールや不足している教育内容を見直し、次の計画につなげます。
PDCAを回し続けることで、ISMSやPマークは形だけの認証ではなく、実態に合った管理体制として機能していきます。
マキナレコードが支援できること
ISMSやPマークの認証取得は、準備から審査対応、取得後の運用まで、継続的な対応が求められます。
そのため、自社だけで進めようとすると途中で手が止まったり、想定以上に工数がかかってしまうケースも少なくありません。
こうした課題に対し、認証取得支援コンサルを活用する企業も増えています。
マキナレコードでは、こうした負担を抑えながら認証取得と運用を進めるための、ISMS・Pマークの取得支援コンサルティングを行っています。
取得までの伴走支援
現状の業務や情報の扱い方の整理から、方針設計、規程作成、運用設計、内部監査の準備、審査対応までを一貫して支援します。
書類を整えるだけでなく、実務に無理なく定着する運用を重視しているため、形骸化しにくい体制づくりにつながります。
維持・更新フェーズのサポート
認証取得後も、内部監査や見直し、更新審査などの対応が必要になります。
マキナレコードでは、取得後の維持運用や更新対応についても支援し、運用が止まらないよう継続的な改善をサポートします。
どちらを選ぶかの相談窓口にも!
ISMSとPマークのどちらを取得すべきか分からず、検討が進まないケースも多くあります。
扱う情報の種類や取引先の要件、将来の事業展開を整理したうえで、自社に合った認証を提案することが可能です。
ISMSとPマークに関するよくある質問

ISMSやPマークについて調べていくと、制度の違いは理解できても、実際に取得を検討する段階で細かな疑問が残ることは少なくありません。
ここでは、ISMSとPマークの取得を検討する際によく寄せられる質問を取り上げ、実務の視点から分かりやすく解説します。
ISMS認証とPマークはどちらが難しいですか
一概にどちらが難しいとは言えません。
ISMSは情報資産全体を対象にリスクを整理し、自社に合った管理方法を設計する必要があるため、考える範囲が広く設計面の難易度は高めです。
一方、Pマークは個人情報に特化しており要求事項は明確ですが、全社適用が前提となるため、組織規模が大きいほど運用面の負荷が大きくなりやすい傾向があります。
どちらが難しいかは、事業内容や組織体制によって異なります。
取得にかかる費用の目安はどれくらいですか
取得費用は企業規模や認証範囲、外部支援の有無によって変わります。
一般的な目安としては、Pマークは数十万円から、ISMSは数十万円から百万円台になるケースが多く見られます。
ISMSは毎年の維持審査費用が発生し、Pマークも更新審査や教育などの運用コストが継続的にかかります。
正確な費用を把握するには、自社の規模や範囲を整理したうえで見積もりを取ることが重要です。
どれくらいの期間で取得できますか
準備状況にもよりますが、ISMS・Pマークともに6ヶ月年から1年程度の取得期間が目安です。
既に社内ルールが整っている場合や、対象範囲を限定できる場合は、期間を短縮できることもあります。
一方で、体制構築から始める場合や全社対応が必要な場合は、想定より時間がかかることもあります。
小規模な企業でも取得する意味はありますか
小規模な企業でも取得する意味はあります。
取引先からセキュリティ体制を求められている場合や、将来的な事業拡大、IPOを視野に入れている場合には有効です。
ただし、取得自体が目的になると運用負荷が大きくなるため、自社の体制に合った範囲で進められるかを事前に整理することが重要です。
両方取得する必要はありますか
必ずしも、ISMSとPマークの両方を取得する必要はありません。
多くの企業は、ISMSかPマークのいずれか一方を取得しています。
ただし、法人向けサービスを提供しながら個人情報も多く扱う場合など、事業内容によっては両方を取得するケースもあります。
その場合は、情報セキュリティ全体と個人情報保護の両面で、信頼性を示しやすくなります。
まずは、自社が扱う情報の種類と取引先から求められる要件を整理したうえで判断することが重要です。
まとめ:ISMSとPマークの違いを押さえて、自社に最適な認証を選ぼう

ISMSは情報セキュリティ全般を管理する国際規格で、Pマークは個人情報の取り扱いに特化した国内制度です。
どちらも信頼性を高める有効な手段ですが、守る対象や運用の考え方には明確な違いがあります。
クラウドサービスや法人向け事業が中心であればISMS、個人情報を広く扱う事業であればPマークが向いているケースが一般的です。
事業内容によっては、両方の認証が求められる場面もあります。
認証取得は、単なる証明ではなく、業務プロセスや社内体制を見直すきっかけにもなります。
自社の目的に合った認証を選び、無理のない形で進めることが重要です。
どちらを選ぶべきか判断に迷う場合や、取得準備で悩みがある場合は、専門家に相談するのも有効です。
マキナレコードでは、認証の選定から取得後の運用まで一貫して支援しています。
ISMS・Pマークの取得や比較でお困りの方は、こちらからご相談ください。
Writer
株式会社マキナレコードが運営するセキュリティメディア「codebook」の編集部です。マキナレコードでは、「安心・安全な社会を実現するために、世界中の叡智を集め発信し、訴求していく」ことをミッションとして掲げています。本サイトにおいてもこのミッションを達成すべく、サイバーインテリジェンスや情報セキュリティに関する多様な情報を発信しています。

















