本ブログ記事ではソフトウェア部品表(SBOM)とは何かを定義するとともに、SBOMが現代のサイバーセキュリティに不可欠な基盤となっている理由について解説します。
*本記事は、弊社マキナレコードが提携する米Flashpoint社のブログ記事(2025年10月8日付)を翻訳したものです。
デジタルの世界はソフトウェアがなければ機能せず、現代のソフトウェアにはオープンソースコンポーネントとサードパーティライブラリがこれまで以上に幅広く利用されるようになっています。ほぼすべての商用アプリケーションが数百点、ときには数千点ものこうした外部製の部品(コンポーネント)で成り立っており、その多くはボランティア開発者と世界各地に散らばるメンテナのグローバルネットワークによって維持されています。
この熱意と非中央集権型の構造は大きな資産となっている一方で、必然的にセキュリティの盲点、つまりサプライチェーンの脆弱性を生み出します。Log4ShellやHeartbleed、そして先日のShai-Huludワームに関連するインシデントによって、組織で使われているソフトウェアの構成要素の可視性を高めることの必要性も明確になりました。そこで重要になるのが、「ソフトウェア部品表(SBOM)」です。SBOMはソフトウェアアプリケーションの構築に使用されるすべてのコンポーネント、依存関係、メタデータを機械可読形式でまとめた正規のインベントリであり、セキュリティ対応に必須となるサプライチェーンの透明性を提供します。
本稿ではSBOMを理解するための基礎知識として、SBOMとは何なのか、なぜ重要なのかを解説するとともに、SBOMがサイバーセキュリティのレジリエンスと規制コンプライアンスの両面において急速に不可欠になりつつある理由を考察します。
- 1. リスクのマッピングとトリアージが容易に
- 2. サプライチェーンの信頼性を確立
- 3. 規制要件
ソフトウェア部品表(SBOM)とは?
SBOMは本質的に、特定のソフトウェアに使われたすべてのコンポーネントをリスト化した技術文書のことです。ソフトウェアのレシピのようなもので、以下を含め、コードを構成する要素が項目別に列挙されています。
- オープンソースソフトウェア(OSS):無償で自由に利用できるライブラリとフレームワーク
- サードパーティおよび商用ライブラリ:ほかのベンダーからライセンス供与されたコンポーネント
- 依存関係:使用されたコンポーネント同士の依存関係
- バージョンとハッシュ:各コンポーネント固有の番号と識別子
- ライセンス:法務・コンプライアンスチームにとって重要な情報
理論的には複雑な概念ではありませんが、新しいOSSの絶え間ない導入、そしてコンポーネントの複雑な依存関係によって、正確なインベントリを維持することが運用上の課題となり、自組織で使っているソフトウェアの全容を把握しきれていないケースが少なくありません。こうした認識不足こそが、まさに深刻なセキュリティ上の懸念を生み出す元凶になります。というのも、たった1つの脆弱なコンポーネントが致命的な穴となり、これを脅威アクターに悪用される可能性があるからです。
SBOMを活用する理由
1. リスクのマッピングとトリアージが容易に
セキュリティにおけるSBOMの最大の価値は「事後対応による混乱」が「機先を制するプロアクティブな管理」に変わる点です。サプライチェーンのゼロデイ脆弱性が明らかになった場合、セキュリティチームは通常、影響を受けるアプリケーションを特定するため、長時間にわたる手作業の調査プロセスを開始します。この防御側が対応に費やす時間は、攻撃者に絶好のチャンスを与えることになります。
質の高いSBOMがあれば、このプロセスを素早く実行できるようになります。
- 脅威インテリジェンスプラットフォームにSBOMをアップロードすることで、脆弱なソフトウェアとそのコンポーネントの詳細なリストが取得できる
- SBOMのインベントリに対して脆弱性クエリを実行し、影響を受けるすべてのアプリケーション・製品・顧客を即座に特定できる
- 上記の作業を行うことでトリアージ・パッチ適用・コミュニケーションを始めるために必要なマップが提供され、復旧時間(TTR)が大幅に短縮される
2. サプライチェーンの信頼性を確立
ソフトウェアの相互接続が当たり前の世界において、SBOMを提供することは究極の信頼の証になります。顧客や規制当局に質の高いSBOMを提供することにより、強固で成熟したセキュリティ態勢を対外的に示すことができるだけでなく、説明責任とともに透明性を確立し、「安心の請け合い」を「正当な資料による裏付け」に進化させます。
3. 規制要件
米国政府はサイバーセキュリティ・インフラストラクチャ・セキュリティ庁(CISA)と緊密に連携し、サプライチェーンの透明性に関する法制化を迅速に進めてきました。この動きは具体的な要件として実を結び、2023会計年度国防権限法(H.R. 7900)で定められた通り、米国の国防総省(DoD)またはエネルギー省(DoE)との取引を希望するすべての組織は、新規および既存のソフトウェア契約においてSBOMを提供することが義務付けられました。
次のステップ:SBOMを使った実用的なインテリジェンス
SBOMを作成・共有することには極めて大きな意義がありますが、これはプロセス全体の第一歩に過ぎません。SBOMのセキュリティにおける本当の価値は、リストアップされたコンポーネントに影響を与える脆弱性を特定・修正する能力にあります。
脆弱性インテリジェンスの情報源として従来の公的なソースを利用している組織は、サードパーティやOSSに影響を与える脆弱性のトリアージと修復において困難に直面しがちです。CVE(Common Vulnerabilities and Exposures)やNVD(National Vulnerability Database)のようなソースでは、CVE未掲載の脆弱性に対処するために必要なコンテキストや情報が不十分、あるいはカバーできていないことがよくあるからです。
したがって、質の高いSBOMを維持するには、詳細かつ包括的な情報源が欠かせません。組織に実用的なインテリジェンスと専門家の知見が提供されることにより、エクスプロイトやソリューション、ベンダーリスクについての文脈をさらに深く理解できるだけでなく、最も差し迫った脅威をより適切に優先順位付けできるようになります。
Flashpointでは、重大な脅威に適切なタイミングで対抗するために役立つ脆弱性インテリジェンスを提供しています。今すぐデモをお申込みいただき、そのクオリティの高さを実感してください。
日本でのFlashpointに関するお問い合わせは、弊社マキナレコードにて承っております。
また、マキナレコードではFlashpointの運用をお客様に代わって行う「マネージドインテリジェンスサービス(MIS)」も提供しております。
FlashpointやVulnDBについて詳しくは、以下のフォームからお問い合わせください。










とは?.jpg)
