本稿では2026年冬季オリンピックをめぐる脅威ランドスケープを多角的に分析した上で、競技会場が分散している特有の事情やデジタル的側面の複雑さを背景に、この大会で類例のないサイバー攻撃と物理的混乱が引き起こされる可能性について検証します。
*本記事は、弊社マキナレコードが提携する米Flashpoint社のブログ記事(2026年2月5日付)を翻訳したものです。
ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックは、五輪史上初めて複数の都市で共同開催される大会です。しかし、各競技会場が北イタリアの2万2,000平方キロメートルにも及ぶ広大な地域に散らばっているため、セキュリティにおいては複雑な対応を余儀なくされています。治安部隊はさまざまな脅威に対処するため、ミラノの中心部からアルプスに囲まれたコルティナ・ダンペッツォまで広域をカバーしなければならないのです。
実力行使や物理的攻撃に対するセキュリティの課題
ミラノ・コルティナ2026は競技会場が分散しているため、物理的セキュリティの面で特有の問題が生じています。それぞれの会場はアルプス山脈を抱く複数地域(ロンバルディア州・ヴェネト州・トレンティーノ州)に点在しているため、数千平方キロメートルもの広大なエリアで交通網の安全と迅速な緊急対応を確保するという物流上の大きな課題に直面しています。新たなトンネルの建設、鉄道の増便、バス路線の延伸などが歓迎された一方で、脅威アクターや反対活動による物理的妨害の標的となる可能性もあります。
テロリストと過激主義者の脅威
冬季五輪を標的とするテロリストや過激主義者の脅威について、Flashpointではその兆候を確認していません。とはいえ、この大会が多くの観客を集め、メディアにも大きく取り上げられることを踏まえると、国際テロ組織や国内過激派の活動を支持する脅威アクターが単独で攻撃を行う可能性はいまだ否定できません。
イタリア当局は、2026年冬季オリンピックの開会式に合わせて鉄道網を狙った一連のサボタージュ攻撃を捜査しています。分岐器への放火、ケーブル切断、そして簡易的な爆発装置の発見など、同時多発的な事件で2時間以上の遅延が発生し、重要な交通ハブのボローニャ中央駅は一時的な機能停止に陥りました。
抗議活動
Flashpointのアナリストは、2026年冬季オリンピックに関連する抗議活動をいくつか確認しました。
- 米国および移民・税関捜査局(ICE)への反発:ミラノ中心部で大規模なデモが発生し、大会期間中に米政府高官の警備を担当するICE職員を任務から外すよう要求しました。
- 環境活動家による反五輪デモ:最も組織的な反対運動を行っているのは「Unsustainable Olympics Committee(持続不可能オリンピック委員会)」と呼ばれる団体です。すでにミラノとコルティナでデモを行っており、2月中にさらなる抗議活動を計画しています。
- 親パレスチナ団体の活動:BDS Italiaといった親パレスチナ団体がイスラエルのオリンピック参加を認めないよう要求し、大会ボイコットを声高に訴えています。その他の賛同団体も複数都市で聖火リレーの妨害を試みたほか、開会式に合わせてミラノのドゥオーモ広場でフラッシュモブ形式のデモが行われています。
- ストライキ:イタリアでは交通機関のストライキが頻繁に発生しており、その多くが金曜日に行われています。また、ストの効果を最大限に高めるため、複数の労働組合が2月6日(金)の開会式に併せて行動を起こすと予想されます。この日はさらに、地中海全域の港湾労働者による「抗議活動の国際デー」に制定されています。
2月7日、ミラノのオリンピック村付近で大規模なデモが行われました。約1万人が参加し、冬季オリンピック大会に抗議する平和的な行進はのちにイタリア警察と衝突し、暴力を伴うものに発展しています。当初、参加者の大半はオリンピック施設建設に伴う環境破壊に焦点を合わせていましたが、マスク姿の小規模なデモ隊が発煙筒や石、爆竹などを治安部隊に投げつけました。
2026年冬季オリンピックを狙うサイバー脅威
ミラノ・コルティナ2026はデジタルテクノロジーという側面でも極めて複雑な事情を抱えた国際イベントであり、サイバー攻撃の格好の標的となります。最大のリスクは技術的な欠陥に起因するのではなく、フィッシング・偽サイト・ビジネスメール詐欺など信頼を悪用するありふれた手口から生じます。オリンピックには数十億人の視聴者だけでなく、クラウドサービスやベンダー、接続システムといった広大なネットワークが関わってくるため、運営面で大きな重圧にさらされるだけでなく、広範に及ぶ攻撃対象領域(アタックサーフェス)が生み出されています。
イタリア政府はすでに、米ワシントンD.C.などにある外務省の各オフィスをはじめ、冬季オリンピックの関連Webサイトやコルティナ・ダンペッツォのホテルを標的とした一連のサイバー攻撃を阻止しており、これらの攻撃にロシアの関与が疑われるとの見解を示しました。アントニオ・タヤーニ外相が攻撃を食い止めたと発表してから数日後の2月4日、ミラノ・コルティナ2026はカーリングの試合で幕を開けています。
過去のオリンピックでは、フィッシング攻撃や分散型サービス拒否(DDoS)攻撃、ランサムウェア、そしてオンライン詐欺など、開催国と一般市民の両方を狙ったサイバー活動が明らかに増加しました。また、金銭的利益・スパイ活動・宣伝活動を目的としたサイバー犯罪者や高度持続的脅威(APT) 、ハクティビストなどがオリンピックを悪用することも予想されます。ありふれた脅威や攻撃であっても、規模が大きい場合や危機感を煽るようなものである場合には影響が増幅されます。甚大な被害をもたらすインシデントも、ほとんどがこのような経緯で平凡な攻撃から発生するため、専門家らはセキュリティ意識の向上やデジタルインタラクションの認証、サプライチェーン防御の強化が不可欠だと強調しています。
2026年冬季オリンピックで安全を確保するために
セキュリティの面からミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックを成功へ導くには、リアルタイムインテリジェンス、高度な技術を活用した安全対策、そして参加者一人ひとりの警戒心が欠かせません。サイバー攻撃による妨害活動(サイバーサボタージュ)と物理的な抗議活動は、開会式以降も大会運営に混乱を引き起こす最大の要因に挙げられています。
今年のオリンピックを安全に楽しむため、現地を訪れる際は以下にご留意ください。
- 公式アプリをダウンロードする:交通機関や道路の閉鎖、ストライキ中の「運行保証時間帯」について最新情報をリアルタイムで入手するには、大会公式アプリ「TransportMilanoCortina2026」「ATM Milano」をインストールしてください。
- 金曜日のストライキを考慮する:2月6・13・20日には交通機関のストライキが予想されています。ストが発生した場合、交通機関の運行は朝6〜9時/夜18〜21時の時間帯しか保証されていないため、この点に注意して移動を計画してください。
- デジタルフットプリントを保護する:主要な競技会場では公衆Wi-Fiを使わず、VPNを使用し、チケット購入アカウントや銀行口座の多要素認証(MFA)が有効になっていることを確認してください。
- 抗議活動に近づかない:ほとんどのデモは平和的に行われるはずですが、警察が急に非常線を張る、あるいは交通機関に遅れが生じる場合もあります。
- ドローンの飛行禁止区域を遵守する:ミラノおよび競技会場周辺では、許可されていないドローンの飛行が固く禁じられています。高額の罰金を科せられる、あるいは警備員に止められることがないよう、ドローンを現地に携行しないでください。
Flashpointで安全確保
現時点において、ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックを狙った暴力的脅威が差し迫っているとの兆候は確認されていません。しかし、各競技会場がイタリア北部の複数都市に分散していることや、デジタル的側面の複雑さといった理由からも、絶えず警戒を怠らない体制が求められています。延べ2万2,000平方キロメートルもの広大なエリアの安全を確保するには、物理的な対策だけでなく、デジタル空間におけるリスクと実世界で発生する実力行使のリスクをまとめてカバーできる多面的なアプローチが欠かせません。
サイバーサボタージュや市民の抗議活動、さらに輸送手段の課題が混在する状況に効果的に対処するには、リアルタイムインテリジェンスと予防的なセキュリティ対策を統合した包括的戦略を採り入れる必要があります。Flashpointの『Physical Safety Event Checklist(イベント参加時に身の安全を確保するためのチェックリスト)』をダウンロードし、その詳細を確認してください。
日本でのFlashpointに関するお問い合わせは、弊社マキナレコードにて承っております。
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