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日本の暗号資産取引所がmacOSバックドア「JokerSpy」の標的に

佐々山 Tacos

佐々山 Tacos

2023.06.27

日本の暗号資産取引所がmacOSバックドア「JokerSpy」の標的に

Elastic Security Labsによれば、偵察とコマンド・アンド・コントロールを目的にmacOSバックドア「JokerSpy」や列挙ツール「Swiftbelt」を展開する攻撃群「REF9134」において、日本を拠点とする暗号資産(仮想通貨)取引所(仮に「A社」)が標的になっていたという。この被害組織の名称は明かされていないが、大規模で有名な取引所だとされている。

JokerSpyとは?

JokerSpyは、先週Bitdefenderによって初めて報告された新しいバックドア。同社は、自己署名されたマルチアーキテクチャバイナリ「xcc」と、Pythonで書かかれたバックドア「sh.py」を合わせて「JokerSpy」と名付けた。

xcc

xccはSwiftで書かれたバイナリで、現在のシステムパーミッションを評価するために使われる。バージョン12以降のmacOSに対応している。

sh.py

sh.pyは、Swiftbeltをはじめとするポストエクスプロイトツールを展開・実行するために使われるPythonバックドア。ホスト名、ユーザー名、ドメイン名などのシステム情報を収集・転送することも可能とされる。

日本の暗号資産取引所への攻撃

Elasticによると、2023年5月下旬、その時点で既にA社へのアクセス権を有していた脅威アクターによってxccが実行されたという。脅威アクターはxccの実行後、独自のTCCデータベースを作成して既存のものと置き換えることによってTCCのパーミッションのバイパスを試みていた。そして6月1日には、xccと同じディレクトリから新たなPythonベースのツールが実行されるのが確認され、同ツールを利用してオープンソースのmacOS向けポストエクスプロイト列挙ツール「Swiftbelt」が実行されていたという。

初期アクセスベクター

xccは、以下3つの個別のプロセスによって、bash経由で実行されるという。

・/Applications/IntelliJ IDEA.app/Contents/MacOS/idea

・/Applications/iTerm.app/Contents/MacOS/iTerm2

・/Applications/Visual Studio Code.app/Contents/MacOS/Electron. 

これを踏まえてElasticは、まだ調査段階であるとはしつつも、おそらく悪意あるプラグインやバックドアが仕込まれたプラグイン、またはサードパーティの依存関係が初期アクセス獲得のために利用されているのだろうとの考えを示している。

さらなる詳細については続報を待つべし?

Elasticのブログ記事では、攻撃者の詳細や被害企業名などは明かされておらず、不明確な点が多い。しかし同社は「この攻撃についてのより深い考察が後日発表される可能性がある」と記していることから、今後さらなる情報が明らかになるかもしれないと言える。REF9134やJokerSpyの動向には今後も注目したい。

 

(情報源:Elastic Security Labs ”Initial research exposing JOKERSPY”、The Hacker News “Japanese Cryptocurrency Exchange Falls Victim to JokerSpy macOS Backdoor Attack”、Bitdefender ”Fragments of Cross-Platform Backdoor Hint at Larger Mac OS Attack”)

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