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偽情報とは何か? ユーロスタットの資料より

Yoshida

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2024.04.08

近年国内外で大きな注目を集めている「偽情報」。ソーシャルメディアが普及し、情報消費の在り方が変化していく中で、フェイクニュースをはじめとする偽情報はますます拡散しやすくなってきており、政府関連組織や国連などが対策に力を入れるようになっています。

EUにおける欧州委員会の統計局であるユーロスタット(Eurostat)もそうした組織の一つで、同組織のタスクフォースである「European Statistical System Task Force on Strategic Communication」は2022年、EU諸国の国家統計局やユーロスタットによる偽情報対策の取り組みを支援するためのガイドラインを公開しました。主にEU圏の統計部門を対象とした資料ではありますが、偽情報という概念について理解したり、偽情報の検証に使えるツールについて把握したりするのに役立つ情報が提供されています。そこで本記事では、日本の読者の方々にとっても役立ちそうな箇所を抜粋して翻訳したものを掲載します。

 

なお、本記事のコンテンツは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示4.0 国際/CC BY-SA 4.0 DEED)のもとで掲載されています。原文の抜粋該当箇所やライセンスについて詳しくは、「クレジット」をご覧ください。

偽情報とは何か?

統計分野に関する定義

偽情報は、「フェイクニュース」という言葉では決して説明しきれない現象です。一般的なレベルにおいて、偽情報は政治から教育、ビジネス、メディア、公開討論まで社会のあらゆる部分に影響を与える可能性があるだけでなく、さまざまな形式で出現しうるものです。この偽情報に関する取り組みを進めるためには、タスクフォース(訳者注:本文書では、特に言及のない限り欧州委員会の統計局であるユーロスタットのタスクフォース「European Statistical System Task Force on Strategic Communication」のことを指します)の目的に沿った共通の定義を定めることが必要でした。

先述の欧州委員会(EC)のレポートで定義された偽情報とは、意図的に大衆に危害を加える、あるいは利益を得る目的のもと計画・実行・推進される、あらゆる形式の虚偽情報、不正確な情報、あるいはミスリードしようとする情報です。この定義は、客観的な事実やデータを普及することを中心に活動するNSI(国家統計局)にとっては非常に広い定義であるため、対応が困難なものとなっていました。そのためタスクフォースは、一般的かつより具体的な定義づけを行うことが重要であり、またこれが自身の活動の有意義な出発点となるとの意見をまとめました。なおここでの定義とは、公式統計の領域で適用できるような、有益な分析や提言を行う上での指標となるものが想定されています。

初回の会議では、偽情報の取り扱いを担うサブグループのメンバーが偽情報の定義について議論し、以下のように意見が一致しました。

「偽情報とは、開かれた議論の場で拡散されている、事実に基づかない情報、もしくは明らかに真実でないか、誤った情報のことを指す。このような情報はミスリードすることを意図しているか、『主要メディアで伝えられていない真実』と謳われている。提示された情報は、統計当局が提供する公式の統計情報や事実に矛盾する場合がある」

2種類の偽情報

NSIが目の当たりにする偽情報の量やそのタイプをよく理解するために、タスクフォースのメンバーは自組織が実際に確認した偽情報関連の最近のインシデントを共有・分析しました。ESSの戦略的コミュニケーションに関して、より幅広いタスクフォースのメンバーが収集した偽情報のインシデントを分析する中で浮かび上がったのは、主に2種類の偽情報でした。その1つは「シンプルな偽情報インシデント」と定義されるもの。もう1つはより危険性が高く、取り扱いが難しい「巧妙な偽情報インシデント」と定義されました。シンプルな偽情報インシデントとは、明らかにミスリードすることを意図した誤ったデータまたは作り物のデータのことです。そのため、こちらは正しい数値を言明し、正確な公式データや文書を提示することで容易に反証することができます。

2つ目のタイプは、私たちが対応に最も苦虜している偽情報です。より巧妙な偽情報としては、例えば適切な基準を使わずに可視化されたデータや、異なる時期を比較した資料、NSIの公式データを基に誤った計算が行われた情報(データの信憑性を裏付けるために、統計当局が情報源であることを明言しているもの)が挙げられます。

本書では、これらの2種類の偽情報を区別して取り上げるとともに、適切な対応策や推奨事項をいくつか提案していきます。

「誤情報」は相手を騙す、またはミスリードする意思を持って拡散されるものではないことから、(最終的には騙されたりミスリードされたりする人が出てくる場合もあるにせよ)偽情報とは異なります。一般的に、誤情報は訂正を行い、正確な情報を提供することによって、比較的容易に反証できます。

偽情報を特定、監視、検証する方法

偽情報の拡散を受け、ネット上にばら撒かれた偽情報を監視・検証する個人や組織をサポートするツールがいくつも開発されています。偽情報を取り扱い、各種ツールを提供するさまざまなオンラインプラットフォームが世界中で利用可能です。本書ではほかの組織のこれまでの経験を踏まえ、NSIが使用している、または使用を検討する必要があると思われるプラットフォームとツールに焦点を当てます。

偽情報を取り扱う際、NSIにとって有用な主要ツールとしてタスクフォースで認識されているのは、偽情報を追跡・監視するオンラインツール、ソーシャルメディア監視ツールという2種類のツール群です。

どちらのタイプも、偽情報の拡散に対して脆弱なトピックを扱うユーザー(例:特定の国のNSIなど)に固有のニーズや業務領域に合わせて使うことができます。

それでもタスクフォースでは、偽情報が発生する可能性のあるすべての分野を完全にカバーする監視システムは構築できないと認識しています。注意を集中させ、正しい行動を判断し、実行するためには、NSIにおけるコミュニケーションの専門家といった人間の介入と考察が常に必要です。

自らも偽情報攻撃の標的とされ、だからこそとりわけ警戒態勢にある公式メディアや「主流」メディアを監視することも、偽情報を検出するもうひとつの方法です。新型コロナウイルス危機の最中において、(タスクフォースのメンバーでもある)多くのNSIは、統計分野における偽情報への対策を検討する必要性に駆られました。

偽情報の追跡に使うオンラインツール

偽情報の追跡に使えるオンラインツールには、偽情報の拡散を分析・視覚化するものや、ファクトチェックが行えるもの(例:Hoaxy)、さらにユーザーがファクトチェックする際、例えば特定のトピックまたは政治家の発言を閲覧・検索できるもの(例:Google Fact Check Explorer)などさまざまな種類があります。

偽情報の監視と検証のために偽情報を処理する上で、ストラトコム・タスクフォースのサブグループが認定したツールの完全なリストは付録を参照してください。

ソーシャルメディア監視ツール

ソーシャルメディア監視ツールは、ソーシャルメディアやオンラインコミュニティの管理において幅広い用途がある一方で、偽情報をタイムリーに検出することでも役立ちます。NSIのような組織はソーシャルメディア監視ツールを使うことにより、報道機関やソーシャルメディア、ブログなどのオンラインプラットフォームで、事前に設定したキーワードとアルゴリズムに基づき、特定の用語やトピック(組織名、公表された統計データなど)の言及を追跡できます。組織にまつわる特定の用語のネット上の言及を追跡することによって、NSIは各々のコンテンツについてネット上で繰り広げられるやり取りを監視し、誤った情報や偽情報を特定するだけでなく、しかるべきタイミングでしかるべき対応が取れるようになります。それぞれのオンラインコミュニティで影響力があり、組織が支援を必要とする際に力を貸してくれるであろう協力者をNSIが特定することにおいても、これらのツールが役に立ちます。

偽情報の監視と検証のために偽情報を処理する上で、ストラトコム・タスクフォースのサブグループが認定したソーシャルメディア監視ツールの完全なリストは付録を参照してください。

ソーシャルメディア監視ツールの選択と使用については、各地域のデータ保護担当者と共同で決定することが推奨されます。一部のソーシャルメディア監視ツールについては、収集する個人データの量や種類、またはサーバーの設置場所(米国)によって、一般データ保護規則第2016/679号(GDPR)に準拠していないとみなされる可能性があります。

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付録:偽情報を特定、監視、検証するためのオンラインツール

ネット上の偽情報のトラッキングおよび分析
名称所有者確認済みプラットフォームURL概要言語

Google Fact Check Explorer

Googleすべてリンクファクトチェック担当者やジャーナリスト、研究者の作業効率を高めることが狙い。事実検証のブラウジングや検索が簡単にできる。例えば政治家の発言やトピックを検索できるほか、結果を特定の発行者だけに絞り込むこともできる。このツールを使うと、世界中のファクトチェッカーに特定の画像や主張、コンテンツに関する記事があるかどうか確認できる。すべての言語
Global Disinformation indexVeracity.aiニュースメディアリンクGlobal Disinformation IndexはWebベースのツールで、「特定メディアに偽情報が掲載される確率」に基づいてニュースメディアを評価する。この評価システムはあらゆる種類のメディアをカバーしており、リアルタイムでのスコアを提供する。英語
Hoaxy

Indiana University Bloomington

X(旧Twitter)、オンラインの記事リンク数々の主張の拡散について可視化したり、ファクトチェックを行ったりするなど、ネット上の誤情報を追跡するプラットフォーム。ネット上のフェイクニュースとソーシャルメディアに掲載されている情報のファクトチェックを自動追跡するためのオープンプラットフォームで、情報がネットで共有されたり、人から人へと広まっていく中で、デマによって引き起こされた拡散経路を復元することを目的としている。Hoaxyを使うことで、研究者やジャーナリスト、一般人は大量のデジタル誤情報の蔓延につながる要因や、蔓延を抑制する要因を調べることができる。アラビア語、ベンガル語、ブルガリア語、中国語、英語、ペルシア語、フランス語、ドイツ語、ヒンディー語、イタリア語、日本語、マレー語、ポルトガル語、ロシア語、スペイン語、トルコ語
BotSlayer

Indiana University Bloomington

X(旧Twitter)リンクX上で出回っている情報が改ざんされている可能性について追跡・検知するのに役立つアプリケーション。トレンドになっていて、かつボットらしきものを使った組織的な手法で増幅したハッシュタグやリンク、アカウント、メディアに、異常検出アルゴリズムを使ってフラグを立てる。これによりユーザーは、Xを介して疑わしいキャンペーンに関連するツイートやアカウントを調べたり、Hoaxyを介してこういった情報の蔓延について可視化したり、Googleで関連画像や関連コンテンツを検索したりすることができる。BotSlayerはジャーナリスト、企業、選挙の候補者が、関心対象領域における新しい組織的なキャンペーンをリアルタイムで見つけるために利用する場合があり、こういったキャンペーンの予備知識を一切必要としない。英語
Botometer

Indiana University Bloomington

X(旧Twitter)リンクBotometerはソーシャルボットと思われるものを検知し、Xのフォロワーまたは友達リストから排除するツール。Xアカウントの活動をチェックし、スコアを提供する。すべての言語
Twitterの twXplorer

Northwestern University

X(旧Twitter)リンクソーシャルメディアのリサーチツール。twXplorerにより、ユーザーは特定のワードやフレーズを検索できるほか、最も多く使われているワードやハッシュタグに加えて、最も頻繁に共有されているリンクを自動で確認することができる。研究者やジャーナリスト向けのツールとして設計されている。英語
Iffy Quotientミシガン大学ニュース、情報サイトリンクIffy Quotientは、誤情報(「iffy」)を頻繁に発信するサイトのコンテンツが、FacebookやX上でどれだけ増幅しているのかを数値で表すもの。英語
CrowdTangleFacebook

Facebook、Instagram、Reddit

リンクコンテンツがWebでどのように拡散されるのかを追跡するために発行者が使うツール。ソーシャルメディア上の公開コンテンツをもとに何が起こっているのかについて把握・分析し、報告することができるようになる。またFacebook、Instagram、Redditの公開コンテンツを把握し、公開アカウントのパフォーマンスを長期的に評価・比較できるほか、リファラルをたどることで大きなトレンドを発見し、公開コンテンツがソーシャルメディア上でどのように拡散されるのかを理解できるようになる。すべての言語

 

ファクトチェックおよび事実検証
名称所有者確認済みプラットフォームURL概要言語

Google Fact Check Explorer

Googleすべてリンクファクトチェック担当者やジャーナリスト、研究者などの作業効率を高めることが狙い。事実検証のブラウジングや検索が簡単にできる。例えば政治家の発言や、あるトピックについて検索できるほか、結果を特定の発行者だけに絞り込むことも可能。さらに特定の画像や主張、コンテンツに関する記事があるかどうか、世界中のファクトチェッカーに確認できる。すべての言語
スノープススノープスメディアグループ
N/Aリンクファクトチェック用Webサイト。都市伝説を検証し、その真偽を明らかにするための情報源。英語
EFE VerificaEFE通信社N/Aリンク(ウイルスのように)拡散してスペインの世論を二極化させる偽情報のナラティブについて、正確な情報と文脈を特定、事実検証して提供する情報検証サービス。スペイン語
Factuelフランス通信社(AFP)N/AリンクAFPの事実検証ジャーナリストの世界的なプレゼンスと専門知識を活用し、世界各地の、そしてさまざまな分野における数多くの重要なトピックについて、複数の言語で偽情報を精査・検証する。複数の言語
NewsGuard

NewsGuard Technologies

ニュース・情報Webサイト
リンクニュース・情報Webサイトの信頼性を評価し、ネット上の誤情報を追跡するジャーナリズム/テクノロジー企業。ネット上で閲覧・表示されるニュースの95%を掲載する6,000件以上のニュースWebサイトを対象に、詳細な信頼性評価を提供している。英語
ソーシャルメディア監視
名称確認済みプラットフォームURL概要言語

Talkwalker

すべてのソーシャルメディアチャネルとオンラインメディア

リンク

187言語のソーシャルチャネルとオンラインメディアで何が起こっているのか把握するのに役立つ情報をリアルタイムで提供する。ユーザーは危機的状況に陥る前に、問題や苦情を迅速に特定できる。

187言語

Hootsuite

すべてのソーシャルメディアチャネルとオンラインメディア

リンク

Hootsuiteのダッシュボードにある検索ストリームにより、ビジネス、業界、製品に関連する会話を監視可能。キーワードやハッシュタグ、場所、さらには特定のユーザーに基づいて、人々が何を言っているかを監視できる。

N/A

Brandwatch

すべてのソーシャルメディアチャネルとオンラインメディア

リンク

ブログやフォーラム、ソーシャルメディア、ニュースサイト、レビューサイトから関連データを抽出する際に役立つソーシャルリスニング/分析ツール。このツールを使うことで、顧客がブランドについてネット上で何を/どんな風に話しているのかを把握できる。

あらゆる言語のデータを収集可能。センチメントと主要トピックに関するデータの分析は44言語に対応

クレジット

本記事は、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示4.0 国際/CC BY-SA 4.0 DEED)のもとで掲載されています。

  • 本記事のオリジナルコンテンツは、ユーロスタットの資料『Rules of engagement for handling disinformation — 2022 edition』です。この資料から、「2.What is disinformation? 」、「3. How to identify, monitor and verify disinformation」、「Annex: Online tools for identifying, monitoring and verifying disinformation」を抜粋して翻訳しています。このコンテンツは、上述のCC BY-SA 4.0ライセンスのもと、営利目的も含めて共有や翻案が許可されています。

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