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ロシアFSBの謎多きスパイ部隊、ネット上で売られる勲章バッジからその内部構造が明らかに

佐々山 Tacos

佐々山 Tacos

2025.07.23

ロシアFSBの謎多きスパイ部隊、ネット上で売られる勲章バッジからその内部構造が明らかに

United24 – Jul 20, 2025

ロシア連邦保安庁(FSB)に属する部隊の中でも最も秘密主義的な部隊「センター16」の内部構造や地理的なフットプリントが、OSINT調査を通じて明らかになったという。フィンランドの研究グループCheck Firstが最近公開されたレポートの中で報告した。

FSBのセンター16は旧ソ連のKGB(国家保安委員会)という情報機関/秘密警察のSIGINT(Signals intelligence、シギント)部門を基礎にした部隊であるとされ、電子機器を用いた情報収集やサイバースパイ活動に従事している。今回Check Firstは、FSB職員とコレクターがネット上で共有していた勲章バッジの画像を分析し、そこから読み取れるキーシンボルや部隊の設立日、組織内の命名規則、地図などの情報から、センター16の歴史や内部構造、ロシア国内の傍受センターの所在地などを紐解いたという。

これらの勲章は通常、特定の任務の完了、退職の記念、または組織の節目の記念などで職員に授与される。勲章のデザインには、任務固有のシンボル、公式の略称、設立日、前身組織への言及、または部隊と関連する建物の建築図面などが組み込まれている場合が多いという。Check Firstは、①勲章バッジ製造業者(Breget、SpetsZnak、GosZnakなど)のWebサイト、②コレクターなどが利用する転売プラットフォーム(Meshokなど)、③軍装研究マニアや退役軍人などが運営する特別なフォーラム(Faleristika.info、MirFaleristiki、Zasluga.msk.ruなど)の主に3種類のソースに出回っている勲章の画像を集めて分析を行った。

これにより同チームは、センター16内に少なくとも10の独立した部門が存在することを特定。各部門はそれぞれА、Б、В、Д、К、П、С、СП、СТ、およびТという独自のキリル文字で表記されていることがわかった。なお調査開始前には、このうちの1つである「部門B」のみが公に特定されていた。また勲章バッジに描かれたシンボルイメージのようなものからは、特定の部門の役割を推測する手がかりが得られたという。例えばコンピューターのアイコンが描かれたバッジは部門Кと関連づけられており、この部門がネットワーク関連のオペレーションを担当しているであろうことが示唆されている。このほか、鍵と3つの翼のある雷のマークが描かれたバッジは、内部通信のセキュリティ管理を担当する部門を象徴している可能性が高いという。

加えて内部構造に関しては、センター16には2つの地方支部(セクション3および7)が存在し、セクション7についてはノボシビルスクに位置することもわかったほか、各部門はFSBの内部基準に従い、少なくとも55人の職員を雇用していると推定されている。一方で小規模な部門は最低8人の職員を必要とするとの報告もある。これを踏まえてCheck Firstは、センター16に配置されている総職員数を566人以上と推計している。

内部構造だけでなく、Check Firstはセンター16に関連する10か所の無線電子監視施設の地理的な場所を特定することにも成功している。これらの傍受センターはロシア全土に配置されており、衛星、外交、政府、軍事関連の通信のモニタリングを目的とする戦略的な傍受ネットワークを形成しているものと思われる。この中でも特に注目に値するのが以下の2か所とのこと。

  • Unit 03110:センター16傘下のSIGINT基地として最初に知られるようになった傍受センターで、かつてはキューバに存在していた。Check Firstは勲章バッジの画像と公開されている情報とを照合し、同センターが現在はソチ付近の都市アドレルに所在すると高い確度で評価。その位置から、コーカサスおよび中東地域のモニタリングを担当している可能性が高いとした。
  • Unit 83521:起源は1921年にまで遡るとされるユニット。Check Firstは同ユニットがロシアの飛地であるカリーニングラードに所在することを特定している。この位置に置かれていることで、ヨーロッパの通信を傍受することが可能になっているとみられる。

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