タイ・カンボジア間の緊張続く中、タイの大手メディアNation Groupが2億件のサイバー攻撃に直面
The Cyber Express – July 28, 2025
カンボジアとの関係が緊張状態にあるタイの大手メディア系コングロマリット「Nation Group」が7月27日(現地時間)のブログ記事において、3日間にわたり2億件以上のサイバー攻撃の試みに直面していると報告。タイ当局によると、これは組織的な「カンボジアの情報作戦(IO)」によるものだという。
Nation Groupによると、同グループに属するメディア「The Nation Thailand」と「Thai News」を狙ったこれらの攻撃が開始したのは、タイ・カンボジア国境での武力衝突が始まった23日以降のこと。攻撃の1つはメインのWebサイト「http://www.nationthailand.com」を狙ったDDoS攻撃で、同サイトには24時間で2億2,300万件を超えるリクエストが送られたという。
またWebサイトへのDDoS攻撃だけでなく、ソーシャルメディアページも以下のような攻撃によって重点的に狙われている。Nation Groupは、これらの攻撃がタイのメディア報道の信頼性を貶め、不安定化させることを目的とした標的型のキャンペーンだったと考えているという。
- フェイクアカウントによるスパム:カンボジアのIPアドレスにより作成されたとされる大量のフェイクアカウントがタイのニュースページをスパムで埋め尽くした
- メタへの大量通報:上記のフェイクアカウントが、タイメディアのページやFacebook上のコンテンツについてメタへ組織的に通報。これは、Facebookのもでレーションアルゴリズムを不正に利用してこれらのページを削除させようとする取り組みだったとされる
- 偽情報の拡散:攻撃者らはターゲットページ・コンテンツのコメントセクションにミスリーディングな主張や虚偽の主張を書き込み、正当な反応を大量通報。これにより、偽情報や誤情報の可視性を高めて偽の信憑性を演出しようとしていたとされる
これに対し自社のプラットフォームとオーディエンスを守るため、Nation GroupはカンボジアのIPアドレスからのアクセスを制限するジオブロックを導入。またタイ当局も、メタと協力して通報システムの悪用への対処や、タイのメディアページの完全性回復に取り組んでいるとのこと。
なお、両国は昨日マレーシアで行われた協議を経て、無条件で停戦に入ることで合意したと報じられている。
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目次
- 序論
- ハクティビズム
- ハクティビズムの変遷
- 戦争におけるハクティビズム
- 「選挙イヤー」におけるハクティビズム
- 絡み合う動機
- 国家の支援を受けたハッカー集団
- 偽情報
- 国家間対立
- 偽情報とロシア・ウクライナ戦争
- 偽情報とイスラエル・ハマス戦争
- 偽情報と選挙が世界にあふれた2024年
- 国家型APTの活動
- 中国
- ロシア
- 北朝鮮
- イラン
- マルチチャネルインテリジェンスの運用化における課題と関連リスク