7月30日:サイバーセキュリティ関連ニュース
英国防省、ゲームスキルの高い兵士にeスポーツ参加を奨励
The Register – Tue 29 Jul 2025
英国国防省(MoD)はeスポーツへの支援を強化すべく、英国eスポーツ連盟に対し、既存兵士のデジタル戦闘でのスキルアップを目的とした新トーナメントを開催するよう指示した。
昨年、eスポーツを軍事スポーツとして正式に認定したMoDは、すでに軍全体で親しまれているビデオゲームでサイバー空間への理解とデジタルリテラシーを高められると考えている。サッカーやラグビーでチームワークを育むのと同様、娯楽性より擬似体験を重視した「シリアスゲーム」は「21世紀の課題」に向けた備えとして効果的と評価されており、7月初めには航空母艦プリンス・オブ・ウェールズにeスポーツ施設が設置されたという。
MoDのeスポーツ導入を進めた英国戦略コマンド副司令官トム・コーピンジャー=シムズ陸軍中将は、サイバー空間とデジタル領域における競争や対立がますます広く展開されるようになっていく中で、こういったゲームが「現実世界と仮想世界の双方で思考・行動・革新を行う能力を養い、チームの連携とプレッシャー下での迅速な意思決定を育む」と指摘。eスポーツを通じたドローンオペレーターやサイバーセキュリティ専門家の育成について「ウクライナのパートナーから学んだ」ことに言及しつつ、「eスポーツによって人々の視点が変わり、スキルが高まるだけでなく、国際的な同盟国やパートナーと国境を越えて繋がれるようになることを、人々は急速に理解し始めている」と付け加えた。
MoD初のeスポーツ大会「Defence Esports Games」は、2026年後半に開催が予定されている。
FBI、新たなChaosランサムウェアグループのアフィリエイトから240万米ドル相当のビットコインを押収
BleepingComputer – July 29, 2025
米FBIダラス支部は29日、Chaosランサムウェアグループのメンバーの仮想通貨アドレスから約20ビットコインを差し押さえたことを明らかにした。
FBIの発表によると、同グループのアフィリエイト「Hors」に紐付けられた仮想通貨が押収されたのは2025年4月15日で、この人物は米テキサス州の複数企業に対するサイバー攻撃や恐喝に関与した疑いを持たれている。差し押さえられた資産(240万ドル以上に相当)については、没収を求める民事訴訟が7月24日に起こされたことを米司法省が発表している。
このChaosランサムウェアグループは比較的新しく、BlackSuitランサムウェアがリブランドしたグループと考えられている。Chaosランサムウェアという名称は2021年半ば以降に利用されてきた低レベルのランサムウェア亜種と同じだが、その亜種と新たなChaosグループに関連はなく、後者は悪名高いContiランサムウェアグループから派生したものとされる。
そのContiグループは2022年6月にデータ侵害を受け、活動を停止した後にメンバーが複数のランサムウェアグループに分裂。2023年1月には直接の後継グループとみられるRoyal(Quantum)ランサムウェアグループが結成されている。Royalはその後、BlackSuitとしてリブランドしていた。
なお、米国司法省とFBIはHorsがどのChaosグループに属していたかを明確にしていないものの、BleepingComputerは今回のビットコイン押収が新たなChaosグループに関連していることを確認できているようだ。
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目次
- 序論
- ハクティビズム
- ハクティビズムの変遷
- 戦争におけるハクティビズム
- 「選挙イヤー」におけるハクティビズム
- 絡み合う動機
- 国家の支援を受けたハッカー集団
- 偽情報
- 国家間対立
- 偽情報とロシア・ウクライナ戦争
- 偽情報とイスラエル・ハマス戦争
- 偽情報と選挙が世界にあふれた2024年
- 国家型APTの活動
- 中国
- ロシア
- 北朝鮮
- イラン
- マルチチャネルインテリジェンスの運用化における課題と関連リスク