ベネズエラ大統領、Huawei製スマホは「米国のスパイにハッキングされない」と誤認識
TechCrunch – September 3, 2025
米国との関係が緊張状態にあるベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は、中国企業Huawei(ファーウェイ)製のスマートフォンであれば米国のスパイにハッキングされる恐れはないという誤った認識を抱いている模様。記者会見での発言で明らかになった。
マドゥロ大統領は9月1日に行われた記者会見において、中国の習近平国家主席から贈られたHuawei製スマートフォンを披露。Mate X6というモデルだと思われる同製品を「世界で最高の電話機」と呼び、「米国人はこれをハッキングできない、彼らの偵察機も、衛星もだ」と述べたという。
しかしハッキング不可能なものはこの世に存在せず、とりわけ世界有数の腕前を持つとされる米国政府の専属ハッカーの手にかかればなおさらであるとTechCrunch紙は指摘。また米国を拠点とするある脆弱性研究者が同紙に伝えたところによれば、Huaweiは自社で独自にハードウェアとOS(HarmonyOS)を開発・製造していることから、ハッキングは比較的簡単な方なのだという。さらにこの研究者は、Huaweiの新規開発コードにおける間違いは「現時点ではiOSやAndroidよりもはるかに多いはずだ」とも指摘している。
加えて米国政府のハッカーには、長らくHuawei製品を標的にしてきたという歴史もある。2014年には、米国家安全保障局(NSA)が中国内のHuawei社のサーバーをハッキングし、サーバー内にバックドアを仕掛けていたことがエドワード・スノーデン氏のリーク文書により明かされた。このハッキングにより、NSAに属するスパイは同社の経営幹部のやり取りを傍受し、製品に関する情報を入手することが可能になったとされている。
上記の例は2014年のことだったとはいえ、NSAや米サイバー軍などが、スパイ目的でHuawei製デバイスをハッキングしたり脆弱性を見つけ出したりする任務を負っていることはほぼ確実だとTechCrunchは指摘した。
なお、米国とベネズエラの緊張は最近高まっており、2日には、米軍がベネズエラのギャングの麻薬密輸船を攻撃して11人を殺害したとトランプ大統領が発表。米国側がこの組織にベネズエラ政府が関与していると主張しているのに対し、ベネズエラ側はこれまでこうした関与を否定していることから、今後この攻撃を受けて一層対立が深まることも予想されている。
【無料配布中!】地政学情勢×サイバー動向の解説レポート
レポート『デジタル時代における世界の紛争 – 地政学情勢はサイバー作戦へどう影響を及ぼしているのか』
以下のバナーより、国際紛争や政治動向といった地政学的情勢がサイバー空間に与える影響について解説したSilobreaker社のレポート『デジタル時代における世界の紛争』の日本語訳バージョンを無料でダウンロードいただけます。
<レポートの主なトピック>
本レポートでは、ロシア・ウクライナ戦争やイスラエル・ハマス戦争などの紛争や各国での選挙といった地政学的イベントについて振り返りつつ、それに伴うサイバー攻撃やハクティビズム、偽情報キャンペーンなどのサイバー空間での動きを解説します。また、中国・ロシア・北朝鮮・イランの各国について、関連するハクティビストグループやAPTグループの攻撃事例・特徴などを紹介しながら、サイバーインテリジェンスにおける領域横断的なアプローチの必要性について考えていきます。
目次
- 序論
- ハクティビズム
- ハクティビズムの変遷
- 戦争におけるハクティビズム
- 「選挙イヤー」におけるハクティビズム
- 絡み合う動機
- 国家の支援を受けたハッカー集団
- 偽情報
- 国家間対立
- 偽情報とロシア・ウクライナ戦争
- 偽情報とイスラエル・ハマス戦争
- 偽情報と選挙が世界にあふれた2024年
- 国家型APTの活動
- 中国
- ロシア
- 北朝鮮
- イラン
- マルチチャネルインテリジェンスの運用化における課題と関連リスク