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米国、2025年6月のイラン空襲時に「サイバー兵器」で防空システムを妨害していた

佐々山 Tacos

佐々山 Tacos

2026.02.05

米国、2025年6月のイラン空襲時に「サイバー兵器」で防空システムを妨害していた

The Record – February 5th, 2026

2025年6月に米国とイスラエルがイランを軍事攻撃した際、米国はサイバー攻撃によってイランの防空システムを妨害していたという。複数の米政府関係者の話として、The Record紙が報じた。これは、米国による物理的な戦争でのサイバー兵器の利用が「ますますこなれてきていること」を示唆する新たなサインとも受け取れるという。

 

この軍事攻撃は、「ミッドナイト・ハンマー作戦(Operation Midnight Hammer)」と名付けられた軍事作戦のもと、「イランの核開発計画の破壊」を目的として実施されたもの。なお、イランが核兵器を製造しているという具体的な証拠は存在していない点には注意が必要。米国家情報長官のトゥルシー・ギャバード氏も2025年3月の公聴会において、イランは高濃縮ウランを保有していると伝えた一方で、核兵器の製造自体は行っておらず、製造の承認もしていないと述べている。また国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長も同年6月、「我々の評価に基づき、イランが核兵器を製造するための組織的な取り組みを行っているとは断定できないという結論に達した」と述べていた。

 

ミッドナイト・ハンマー作戦では、フォルドゥ、ナタンズ、イスファハンの「核関連施設」が複数破壊された。当局者の話によれば、これらの施設と接続された別の軍事システムに対する「攻撃」によって、イランが米軍機に対して地対空ミサイルを発射するのを防ぐことができたという。米サイバー軍は、米国家安全保障局(NSA)の提供情報を活用し、イラン軍のネットワーク上の弱点(重要なネットワーク機器など)に侵入。そこを足掛かりにシステム全体に影響を及ぼしたとされる。具体的な侵入手法や攻撃手段といった詳細情報については、安全保障上の理由で公表されていない。

 

米軍統合参謀本部議長のダン・ケイン大将は、「ミッドナイト・ハンマー作戦」の終了後に国防総省で行われた記者会見において、サイバー軍の貢献を公に称賛。サイバー軍が物理的な「攻撃パッケージ」を支援したことで、30分足らずの間に3か所すべての核施設を攻撃することができたと述べたとされる。

 

また米政府関係者らの話により、サイバー軍が2025年12月のベネズエラでの作戦でもサイバー作戦を行い、首都カラカスへの電力供給を停止させたほか、防空レーダーなどのシステムも妨害したことも伝えられている。ケイン大将もフロリダ州で行われた記者会見において、サイバー軍などの部隊がヘリコプターで接近する特殊部隊のために「進入経路を作り出す」目的で、「複数の効果を重ね合わせる」作戦を実施したことを明かしたとされる。

 

米サイバー軍およびNSAの長官代行である米陸軍のウィリアム・ハートマン中将は、ベネズエラでの作戦やイランでの作戦などを例に挙げ、「私たちはすでに、サイバー能力をキネティックな能力と同じように扱う段階にまで到達しています」と議会の小委員会で発言。サイバーが物理的な攻撃の単なる「補完要因」の域を脱するようになったとの見解を示したという。

 

また、統合参謀本部でグローバル作戦担当の副局長を務める空軍のライアン・メッサー准将は、ケイン議長が「従来のキネティック(物理的)な効果だけでなく、非キネティックな効果、特にサイバーが、あらゆる世界規模の作戦において果たす役割を重視している」ことを明かした上で、ここ6か月間の間に、統合参謀本部が「非キネティック効果担当の専門チーム」を新たに設置した旨を述べたとされる。このチームの目的は、世界中で行われるあらゆる作戦について、計画段階から実行に至るまで、すべての非キネティック手段を統合・調整・同期させることだという。

 

なお、「キネティック」がミサイル攻撃など、物理的手段による攻撃を意味するのに対し、軍事用語でいう「非キネティック効果」とは、サイバーなど非物理的な手段によって生み出される効果を指す。

 

米国の保守系シンクタンク「民主主義防衛基金(FDD)」のサイバー・技術革新センターの非常勤研究員であるエリカ・ロナーガン氏は、イランとベネズエラの事例について、「これら2つの作戦はいずれも、軍事作戦におけるサイバー能力の使用が常態化してきていることを反映」していると指摘。また、「今後さらにこうした事例が増えると考えるべきだ」との見解も示した。一方でロナーガン氏は、「これらの事例を一般化し、中国のような敵対国が関与する有事の文脈で同様に展開されると推論しているわけではない」とも付け加えている。

 

米国のベネズエラ侵攻については国際法違反の指摘もあり、国内外で非難の声が上がった。ICEの強硬な移民摘発や同盟国への関税措置など、米政権の姿勢に対する懸念が広がる中、ヨーロッパではテクノロジー領域における「脱米国」を模索する動きも見られる。そうした状況下で報じられた今回の対イラン軍事作戦におけるサイバー能力の使用や、それを重視する軍関係者の証言は、ヨーロッパなどの国々が米国に対する警戒感をさらに強める一因となる可能性も考えられる。

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