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車がドライバーのスパイに?自動車データを駆使した監視・諜報ツールを複数のイスラエル企業が開発

佐々山 Tacos

佐々山 Tacos

2026.02.18

車がドライバーのスパイに?自動車データを駆使した監視・諜報ツールを複数のイスラエル企業が開発

HAARETZ – February 16, 2026

自動車に搭載されたテクノロジーをハッキングしたり、ハンズフリーシステムやタイヤ空気圧などのデータを集めたりすることで、乗車する人物のインテリジェンスを収集する高度なサイバーツールが、イスラエルの複数企業により開発・販売されているという。この「CARINT(カー・インテリジェンス)」と呼ばれる新たな分野について、HAARETZ紙が伝えている。

 

ここ数年間で自動車の「スマートデバイス化」が進み、ドライブの快適さが増していく一方で、車両から送られるデータ量の多さから、乗車する人々のプライバシーに関するリスクも深刻化している。また自動車に搭載されたテクノロジーをめぐるセキュリティ上のリスクも懸念されており、これまでにも複数のエシカルハッカーが車両システムをハッキングすることで完全に制御し、遠隔操作によって走行方向を変更したりエンジンを停止させたりできることを実証してきた。

 

そんな中、CARINT市場では、車に搭載されたテクノロジーから集めたデータで車内の人物を偵察したり、集めたデータをその他のソース(路上の監視カメラなど)から収集された別のデータと照合して対象人物の車の位置を突き止めたり、リアルタイムで車の動きを追跡したりするための高度なサイバーツールが開発・販売されているという。

 

Haaretz紙は調査の結果、このようなCARINTツールに関わるイスラエル企業が少なくとも3社あることを発見。このうち1社は「オフェンシブ」なツールを開発しており、このツールを使うことで、車内で交わされる会話を盗聴したり、車載カメラに潜入して車内の様子を密かに盗み見ることもできるようになる可能性があるとされる。

 

このオフェンシブなCARINTツールを提供していたのが、Tokaというオフェンシブ・サイバーインテリジェンス企業。Haaretz紙が3年前にその存在を暴いたこの企業は、イスラエル元首相のバラク氏と同国防軍(IDF)の元サイバー司令官ローゼン准将が共同設立した企業で、セキュリティカメラのハッキングを専門としていた。しかし当時、Tokaはカメラのデータと自動車関連のデータを融合させる製品(製品名:CARINT)も提供していたという。

 

当時のCARINTツール市場はまだ黎明期にあったものの、Haaretz紙の複数の情報筋によれば、Tokaはその後自動車関連の製品展開を拡大。特定の車両のマルチメディアシステムへハッキングする性能や、車両の位置をピンポイントで特定してその動きを追跡する性能を備えた製品まで開発・販売していたと伝えられている。またこのツールには、自動車のハンズフリーシステムのマイクへ遠隔アクセスし、車内の人の声を盗聴したり、ダッシュボードや車体周囲に設置されたカメラへ潜入したりすることも可能だったとされる。ただし、すでにTokaはこのツールの販売を終了しているという。

 

一方、現在進行形でCARINT製品を提供しているとみられるのが、Rayzoneというサイバーインテリジェンス企業。同社の自動車偵察ツールは車両の追跡性能しかないものの、多様なソースから集めたデータとの照合に使えるさまざまな製品と併せて販売されている。こうした製品の1つには、ユーザーに提示される広告のデータから当該ユーザーを追跡したり身元を特定したりすることを可能にする強力なツールもあるという。

 

子会社「TA9」から販売されているRayzoneの新たなCARINT製品は、位置情報データと移動パターンを分析し、自動車に挿入されたSIMカードを使って乗車する人物を追跡しつつ、自動車のワイヤレス通信とBluetooth通信をモニタリングすることができる。また路上の監視カメラのデータやその他のデータとの照合により、ナンバープレートを特定することも可能とされる。このように多様なソースから得られたデータと車両データを「融合」させることで、対象人物に関するインテリジェンスをフルに提供するという。つまり、Rayzoneにとって自動車は、同社が追跡する数あるデータポイントのうちの1つに過ぎないとも考えられる。

 

Haaretz紙によれば、Aterosというイスラエル企業もCARINT製品を提供中の企業の1つ。同社は、軍や政府機関向けにインテリジェンステクノロジーを開発しているNetlineという企業の新たなAI駆動系子会社とされる。Aterosの主要製品である「GeoDome」は、ナンバープレート特定などに使われる政府システムと連携させることが可能なほか、携帯通信やその他の政府関連の機能によって集められたデータとの照合が可能となっている。また、インターネット接続された自動車からインテリジェンスを収集できるNeline社のSIGINT製品「Onyx」との連携も可能とされる。

 

また、Aterosのインテリジェンス製品にデータを供給するNeline社のセンサーの1つは、自動車のタイヤ内に存在。このセンサーによって捕捉される各車両によって固有な空気圧データは車の「指紋」として使えるため、Ateroのシステムはこれを使って特定車両を識別することができるという。

 

これらの企業に加え、情報筋によればイスラエル・エアロスペース・インダストリーズのサイバー系子会社であるElta社もCARINT製品を開発中とされるが、同社はコメント提供を拒否しているという。

 

監視・偵察業界では、NSO GroupやParagonのスパイウェアのように、暗号化された携帯電話をハッキングできる高度に侵入的な特注監視システムが多用されてきた。しかし少なくとも車両監視の分野においては、これが「複数ソースから得られたデータのAIによる融合」を活用する方向へとシフトしつつあることを、Elta社のCARINT製品などが示しているとHaaretz紙は指摘。自動車の脆弱性を悪用することは携帯端末と比べてはるかに困難であるとの専門家の声を紹介しつつ、TokaがオフェンシブなCARINTツールの提供を終了したのもおそらくこれが理由であろうと述べた。またAI駆動型のデータ融合が非常に効果的であることも、わざわざ自動車のハッキングに挑む必要性の低下に寄与していると複数の情報筋が語っているという。

 

それでもHaaretz紙は、自動車の「デジタル化」によるプライバシーリスクの増大について、長年にわたりエシカルハッカーやサイバーセキュリティ企業・研究者らが警告してきた点を強調。「国家(政府)は単に自動車の位置を特定したがっているだけでなく、遠隔操作で停止させる能力をも欲している」という情報筋のコメントを紹介した上で、車のデジタル化が進めば進むほど、物理的な脅威は大きくなっていくだろうと指摘している。

 

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