ウィークリー・サイバーラウンド・アップ
Stealth FalconがHorus Agentを展開、政府機関や防衛機関に対するスパイ活動が目的(CVE-2025-33053)
2025年3月、Check Pointの研究者はAPTグループ「Stealth Falcon」による攻撃活動を発見した。トルコ・カタール・エジプト・イエメンの政府機関や防衛機関を狙ったこの攻撃では、ゼロデイ(CVE-2025-33053)を悪用したURLファイルを利用してアクターが管理するWebDAVサーバーからマルウェアが実行される。Stealth Falconは、既存のエージェントまたはHorus Agentから派生したMythicフレームワークをベースにしたカスタムインプラントを展開する。感染の発端は、PDFに偽装されたアーカイブ添付ファイルにURLを含むスピアフィッシングメールだと考えられている。URLファイルはInternet Explorer用の正規の診断ユーティリティを起動する一方、攻撃者が管理するWebDAVサーバーからコードを密かに実行し、ユーティリティを欺いて悪意のあるプログラムを走らせる。実行ファイルはHorus Loaderと呼ばれる多段階ローダーで、おとりのPDFを開くとともにHorus Agentも展開する。CVE-2025-33053は2025年6月のマイクロソフト月例パッチで修正されている。
UNK_SneakyStrike ATOキャンペーン、TeamFiltrationを用いてMicrosoft Entra IDアカウントを狙う
Proofpointの研究者により、「UNK_SneakyStrike」として追跡されているアクティブなアカウント乗っ取り(ATO)キャンペーンが発見された。ペネトレーションテストフレームワークTeamFiltrationを用いてMicrosoft Entra IDユーザーアカウントを標的とするこのキャンペーンは、2024年12月以降、約100のクラウドテナントにまたがる8万件以上のアカウントを狙い、複数のアカウント乗っ取りに成功している。攻撃者はMicrosoft Teams APIとさまざまな地域に設置されたAmazon Web Servicesサーバーを使い、ユーザーの列挙やパスワードスプレー攻撃を展開。これらの不正な活動は、主に米国やアイルランド、英国から行われている。TeamFiltrationは2021年1月に開発され、いくつかの戦術・技術・手順の自動化を支援。このツールはアカウントの列挙やパスワードスプレー攻撃、データ窃取、OneDriveを介したバックドア設置など複数の機能を提供する。
大手ブランドになりすます詐欺キャンペーンGhostVendors、Facebook Marketplace広告を不正に利用
Silent Pushの研究者が「GhostVendors」と呼ばれる偽マーケットプレイス詐欺キャンペーンを発見した。このキャンペーンは4,000以上の不正ドメインを悪用し、大手ブランドに扮して消費者を欺くもので、Facebook Marketplace広告とMeta広告ライブラリポリシーを不正に利用して偽広告を宣伝している。これらの広告は一定期間掲載された後に削除され、詐欺サイトもドメイン生成アルゴリズムを使って迅速に作成・削除されている。確認されたFacebook Marketplace広告の1つは「Millaeke」という名前を使い、Milwaukee Toolsを装って偽の工具製品を販売。このページには複数の広告が掲載されていたが、どの広告も5日後にMeta広告ライブラリから削除されている。研究者らはさらに、「Rabx-B」「Tools Clearence」「Holiday Celebration Sale」という名前で運営される同じ脅威アクターのFacebook Marketplace広告の例をほかにも複数特定。これらは、過去のコンテンツフィンガープリンティングに一致するドメインを宣伝していた。
Operation Phantom Enigma、有害なブラウザ拡張機能を使ってブラジルのユーザーを攻撃
Positive Technologies – June 3, 2025
Positive Technologiesの研究者により、2025年初頭から有害なブラウザ拡張機能を悪用してブラジルの利用者を標的とするフィッシングキャンペーン「Operation Phantom Enigma」が観測された。Eメールはインボイスを装い、受信者にリンクからファイルをダウンロード、またはアーカイブ内の悪意のある添付ファイルを開くよう仕向ける。攻撃には多数のファイル形式が使用され、有害なPowerShellスクリプトをダウンロードして実行するBATファイルや、PowerShellスクリプトを実行するInno Setupインストーラー、有害なブラウザ拡張機能をGoogle Chrome・Microsoft Edge・BraveにインストールするMSIファイルなどがある。有害な拡張機能はシステムの基本的な情報を収集し、C2サーバーに送信する。また、拡張機能には複数のJSファイルとマニフェストファイルが含まれており、URLパターンからBanco do Brasil(ブラジル銀行)のものだろうと推測できる。別パターンの攻撃では有害な拡張機能の代わりに、Mesh AgentやPDQ Connect Agentのようなリモートアクセスツールが展開される。
Operation DRAGONCLONE、VELETRIXとVShellで中国通信企業を標的に
Seqriteの研究者は2025年3月以降、VELETRIXローダーとVShellマルウェアを使い、中国の通信企業China Mobile Tietongを標的にした進行中のキャンペーン「Operation DRAGONCLONE」を確認した。このマルウェアは多段階の感染チェーンを通じて配布され、さまざまなファイルを含む有害なZIPファイルから始まり、修復ソフトWondershare Repairitに対してDLLサイドローディングを用いている。VELETRIXはインストールされた後、自動のサンドボックス分析から逃れるためにビープ音を鳴らし、NtDelayExecution技術で実行を遅らせた上に検出を回避。その後はDLLサイドローディング、IPFuscation、およびコールバックメカニズムを介したコードインジェクションを使ってメモリにVShellをインストールし、オペレーターとのC2通信を確立する。さらに研究者チームは、インフラが中国系脅威アクターのUNC5174およびEarth Lamiaと重複していることを確認した。
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翻訳元サイトについて
本レポートは、OSINT特化型インテリジェンス(情報)収集・分析ツール「Silobreaker」が収集したオープンソースの情報を元に作成しています。レポート内のリンクに関しては、翻訳元の記事をご参考ください。
翻訳元 : Weekly Cyber Round-up
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- 主なプレーヤーと被害組織
- データリークと被害者による身代金支払い
- ハクティビストからランサムウェアアクターへ
- 暗号化せずにデータを盗むアクターが増加
- 初期アクセス獲得に脆弱性を悪用する事例が増加
- 公に報告された情報、および被害者による情報開示のタイムライン
- ランサムウェアのリークサイト – ダークウェブ上での犯行声明
- 被害者による情報開示で使われる表現
- ランサムウェアに対する法的措置が世界中で増加
- サプライチェーン攻撃を防ぐため、手口の変化に関する情報を漏らさず把握
- 複数の情報源と脅威インテリジェンスツールを活用することが依然不可欠
インテリジェンス要件定義に関するガイドブック:『要件主導型インテリジェンスプログラムの構築方法』
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<ガイドブックの主なトピック>
本ガイドブックでは、優先的インテリジェンス要件(PIR)の策定にあたって検討すべき点と、PIRをステークホルダーのニーズに沿ったものにするために考慮すべき点について詳しく解説しています。具体的には、以下のトピックを取り上げます。
- 脅威プロファイルの確立
- ステークホルダーの特定・分析
- ユースケースの確立
- 要件の定義と管理
- データの収集と処理
- 分析と生産
- 報告
- フィードバック
- 実効性の評価