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絵文字のインテリジェンス:脅威アクター間の意思疎通、情報秘匿、連携における絵文字の役割とは

yab

2026.04.21

本稿では、脅威アクターが不法コミュニティ上で使用する絵文字とそれに隠された意味を紹介し、このようなコミュニケーション方法を理解することが脅威インテリジェンスチームにとってこれまで以上に重要である理由を解説します。

*本記事は、弊社マキナレコードが提携する英Flashpoint社のブログ記事(2026年4月6日付)を翻訳したものです。

脅威アクターの活動では、TelegramやDiscordのようなインフォーマルで流れの速いコミュニケーションプラットフォームの使用が引き続き増えており、情報伝達の方法も変化しています。些細な存在、あるいは非技術的なものとみなされがちな絵文字も、この発展の中では大きな意味を持つようになっています。

不法フォーラムやメッセージングアプリ、非公開コミュニティにおいて、絵文字は単に感情表現のために使われているだけでなく、投稿の意図を伝えるための合図や活動のカテゴリー分け、あるいは部外者にメッセージの意味を理解されないようにするための手段としても活用されています。このようなコミュニケーションを分析することで、情報伝達において何が解釈され、優先順位が付けられ、行動へ移されているかを理解するための手がかりとなるコンテキストを補足的に得ることができます。

機能的なコミュニケーション手段としての絵文字

脅威アクターのコミュニティ内における絵文字は、それぞれの用法が体系化され、投稿者を選ばず同様の意味・意図で使用可能になっている場合がほとんどです。

書き言葉すべてを置き換えるためではなく、情報のレイヤーを追加するために絵文字は使われています。つまり、重要な概念や内容を強調し、大量のやり取りが行われる環境での情報伝達の速度を高めています。

このような傾向は以下の環境で特に顕著です。

  • Telegram上の不法行為に関するチャンネル
  • フィッシングやカーディングのコミュニティ
  • サービスマーケットプレイスやアクセスブローカーグループ

これらの環境では、情報のスピードと簡潔さが重視されます。絵文字を使って表記することで長い文章を読み解く手間を省くことができるため、脅威アクターはメッセージの内容を瞬時に読み取り、関連する内容を把握し、何らかのリアクションをすることが可能になります。

よく使われる絵文字とその意味

Flashpointが行った不法コミュニティの分析によると、絵文字の使用は繰り返し言及されるいくつかのカテゴリーごとにまとまる傾向があります。それぞれの絵文字が示す意味はグループによって若干異なる場合があるものの、一貫したパターンがいくつか確認されています。

経済活動と収益化

最も頻繁に使用される絵文字は、お金に関するものです。

よく見られる例として、以下のようなものがあります。

  • 💰/💸:利益・詐欺の成功・支払い
  • 💳:クレジットカード、カーディング行為、窃取された決済情報
  • 🏦:銀行や金融機関
  • 🪙:暗号資産関連の活動

これらの絵文字は売買に関する投稿や詐欺ログ、侵害成功の主張でよく使われるため、脅威アクターは自らの金銭的利益につながる機会をすぐに見つけ出すことができます。

アクセス・認証情報・侵害

アカウントアクセスや侵害に関する絵文字カテゴリーも存在し、提供可能な認証情報や侵入の成功例、侵害したシステムの乗っ取りなどを知らせるために使用されています。

例は以下の通りです。

  • 🔑:認証情報やアカウントアクセス
  • 🔓:成功した侵害やロックが解除されたアカウント
  • 📥/📤:データの抽出や転送
  • 🗂️:データベースや窃取データのコレクション

多くの場合、これらの絵文字は必要最低限の文章と組み合わされて使用されており、脅威アクターは詳細を共有することなくアクセスや成果を宣伝できます。

ツール・自動化・サービス

絵文字はツールやサービスを提供する際にも使用されています。

以下の用例が確認されています。

  • 🤖:ボット、自動化ツール、マルウェア
  • ⚙️:設定、セットアップ、インフラ
  • 🧰:ツールキットやサービスのバンドル販売
  • 📡:インフラ、コミュニケーションチャンネル、配信方法

これらの絵文字はフィッシング・アズ・ア・サービス(PhaaS)やSMSゲートウェイサービス、マルウェア配信に関するコミュニティで頻繁に用いられています。

標的とする組織や国および地域

標的とする対象や国・地域を絵文字で表記する事例も多く見られます。

関連する絵文字は以下の通りです。

  • 🏢:企業や組織
  • 🎯:ターゲティングや「大当たり」
  • 📍:具体的な標的、場所、攻撃関心領域の開示
  • 🌐:世界的キャンペーン
  • 国旗の絵文字:特定の国や地域

脅威アクターはこれらの絵文字を使うことで、複数の言語や地域が入り混じる国際的なグループの中で攻撃対象を簡潔に伝達しています。

緊急度・成功事例・ステータス

活動の勢いや重要度を示すための絵文字も存在します。

以下が使用されています。

  • 🔥:価値や注目度の高い活動
  • ✅:裏付けの取れている成果や有効手段
  • 🚨:緊急性の高いアップデートや実行中のキャンペーン
  • 📈:進歩や成果の向上

これらの絵文字は、脅威アクター同士が注目を集めようと競い合う、情報の流れが速いチャンネルにおいて特に大きな役割を担っています。

難読化ツールとしての絵文字

絵文字は情報伝達のみを目的として使われているのではなく、検出を回避するためにも使用されています。

脅威アクターは、以下に関するキーワードを絵文字で置き換えていることがあります。

  • 不法行為を行うための技術
  • 経済活動
  • 特定のプラットフォームやサービス

例えば、「クレジットカード」を「💳」に、「銀行」を「🏦」で置き換えるだけで、投稿自動監視システムに搭載された基本的なキーワードフィルターを回避でき、情報の可視性を下げることができます。

さらに絵文字をスラングや略語、ほかの言語での言い換えと組み合わせることで、多層的な難読化を生じさせ、大規模な監視活動に混乱をもたらします。

絵文字の癖からアクター像を探る

絵文字の使用は機能だけでなく、行動的な観点からも分析に活用できます。

時が経つにつれ、脅威アクターは特徴的な絵文字の使用パターンを身につけることがあります。

  • 宣伝投稿内の絵文字の一貫した組み合わせ
  • 繰り返し使われる書式スタイル
  • 文章構成の癖

このようなパターンを簡易的な識別子として用いることで、以下の分析を行う際に役立てることができます。

  • 複数チャンネルにわたって活動する同一アクターの追跡
  • 再度投稿または配信されたコンテンツの特定
  • 異なるプラットフォーム間での活動の関連付け

ハンドルネームが頻繁に変更されるエコシステムでは、このようなわずかな特徴でさえも実行者特定のための付加的な手がかりになり得ます。

国際的な脅威エコシステムにおける多言語コミュニケーション

不法コミュニティは本質的に国際色が強く、複数の言語や国と地域にわたってメンバーが存在しています。

絵文字は共通言語としての視覚的情報をもたらすため、脅威アクターは文字情報に依存することなくコアとなる概念を共有することができます。したがって、特に以下を調査する際に重要になります。

  • 世界各地からメンバーが集まる大規模なTelegramチャンネル
  • 国際的な不法行為作戦
  • 分散型マーケットプレイス

具体例として、「💳+💰+🌍」のように組み合わせると、脅威アクター間で相互理解可能な言語がなくとも「国際的なカーディング行為の機会」というメッセージを伝えることができます。

意味を視覚的に圧縮する絵文字を使った表記法は、脅威アクターネットワーク全体の活動規模拡大と連携に役立っています。

とはいえコンテキスト次第で意味は変動

上で述べたように絵文字の使用にはパターンがみられるものの、それが示す意味は必ずしも普遍的・固定的ではありません。

同じ絵文字であっても、以下の要因によって意味が変わります。

  • プラットフォームの種類(Telegram・Discord・フォーラム)
  • コミュニティの属性
  • 前後の文章やコンテキスト

例えば、「🔥」という絵文字は、あるグループでは「高価値」を意味することもあり、一方で別のグループでは「現在進行中の議論」を意味することもあります。

したがって、アナリストは絵文字を独立した指標としてではなく、文脈を要するシグナルとして扱う必要があります。意味を正確に解釈するには、コミュニケーション環境をより広く理解することが不可欠なのです。

脅威インテリジェンスチームが考えるべきこと

絵文字の使用は、脅威アクターがより迅速でより視覚的、そしてより適応性の高い情報伝達方法へ移行している状況を反映しています。

絵文字の分析をインテリジェンスワークフローに組み込むことで、以下の側面を強化できるとFlashpointは考えています。

  • 新たなキャンペーンの検出
  • 高価値な活動の発見
  • 脅威アクターの特定と追跡
  • 投稿に込められた意図や感情の理解

絵文字単体では判断材料として不十分であるものの、分析全体を補強する情報として活用できるのです。

脅威インテリジェンスでセキュリティチームを支援

脅威アクターが絵文字を使ってコミュニケーションをする方法を理解することで、新たな脅威を特定し、解釈するための重要なコンテキストを得ることができます。

Flashpointでは、不法コミュニティの監視や、変化するコミュニケーションパターンの追跡を行い、生データを実用的な知見に変換しています。当社の独自プラットフォームでは、Flashpoint IgniteやEchosecなど複数の環境にわたり、キーワードと絵文字を組み合わせて検索できるため、関連性の高い会話やシグナル、新たな活動をより正確に、取りこぼすことなく確認することが可能になります。

このアプローチにより、セキュリティチームは脅威アクターのコミュニケーションに隠された意味を捉えることができるため、検出や実行者特定の精度を高め、さらには全体的な状況認識力を向上させることができます。

Flashpointのリアルタイムインテリジェンスと分析がセキュリティチームの活動をどのように支援するかについては、デモをお申し込みして確認してください。

 

日本でのFlashpointに関するお問い合わせは、弊社マキナレコードにて承っております。

また、マキナレコードではFlashpointの運用をお客様に代わって行う「マネージドインテリジェンスサービス(MIS)」も提供しております。

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