先日リリースされた欧州脆弱性データベース(EUVD)と、急速に進化する脆弱性インテリジェンスランドスケープにおけるその役割について、最もよくある疑問にFlashpointが回答します。
*本記事は、弊社マキナレコードが提携する米Flashpoint社のブログ記事(2025年5月14日付)を翻訳したものです。
先ごろ、欧州ネットワーク情報セキュリティ機関(ENISA)が欧州脆弱性データベース(EUVD)を正式に立ち上げたというニュースが報じられました。この公開リソースは、脆弱性インテリジェンス(VI)においてヨーロッパが自立を強める動きを象徴しています。今回の発表は、米国の共通脆弱性識別子(CVE)プログラムをめぐる大きな混乱の直後に行われました。CVEは2026年3月までしか契約が延長されておらず、長期的な存続については懸念が広がっています。
現代の脅威ランドスケープに必要とされているのは、CVEや脆弱性情報データベースのNational Vulnerability Database(NVD)のような、一元的でタイムラグと制約のあるシステムではなく、リアルタイムで更新される自立型の脆弱性インテリジェンスです。このサイバーセキュリティ業界のニーズを考慮してみると、これらの重要な課題をEUVDで解決することはできるのでしょうか?
EUVDはCVEに代わるもの?
EUVDはCVEに代わる脆弱性情報として開発されましたが、この業界に必要なのは脆弱性カタログ以上のもの、つまり「生きたデータベース」です。Flashpointはこれまで、CVEやNVDといった従来の脆弱性システムの進化と限界をつぶさに目撃してきました。資金にまつわる不確実性、登録の遅延、膨大なバックログ、網羅性の課題、そして時代遅れの構造によって、これらのリソースへの過度な依存が脆弱性管理プログラムに深刻な支障を及ぼしてきたことは周知の事実です。EUVDのような代替システムの出現は、セキュリティコミュニティがこれらの課題を認識したことによる自然な帰結なのです。
今日のVIでは、組織が重要なセキュリティ上の意思決定を行うために信頼できる、タイムリーで関連性が高く、偏りのないデータを提供することが求められています。しかし現状では、EUVDには防御側のリアルタイムの要求に対処できる深みと革新性が足りていません。CVEプログラムのコピー版ではない、より柔軟で将来を見据えたモデルによって、Flashpointはその取り組みをリードすることに注力し続けています。
業界が求めるのはカバー範囲プラスアルファ
Flashpointは40万件を超える脆弱性に関する実戦的なインテリジェンスを提供しており、カバー範囲とCVEへのマッピング能力では以前からCVEを凌駕しています。また、Flashpointは「悪用が確認済みの脆弱性(KEV)」の特定においても市場をリードする存在で、ゼロデイや新たに発見された脆弱性、実際に悪用された脆弱性など計4,500件以上の脆弱性に関するインテリジェンスを提供してきました。CISAの1,377件、EUVDの約1,266件と比べても、かなりの数に上ります。
さらに、Flashpointの脆弱性インテリジェンスサービスには脆弱性エントリごとに、影響を受けるバージョンや、より便利になった悪用可能性に関する情報、ランサムウェア攻撃で利用される可能性、ソーシャルリスク評価など、重要なメタデータが豊富に揃っています。
MITREへの資金提供の不確実性がEUVD始動を促したのか?
サイバーセキュリティへの資金提供をめぐる昨今の不確実性は、脆弱性インテリジェンスの自立に向けたヨーロッパの動きを加速させたように思われます。しかし、EUVDの構想がスタートしたのは最近の資金問題より早いことに注目すべきで、2016年のNIS1指令と、その意図と開発努力を示した2024年の公示に遡ることができます。これが意味するのは、EUVDにはおそらく、CVEが長らく抱えてきた問題を解決する目的で考案された側面もあるということです。CVE-IDが採番されない脆弱性の多さをめぐっては2017年に米議会がMITREの精査を行いましたが、それ以前からすでに、こうしたCVEの欠陥は存在していました。
このタイミングにEUVDが始動したという事実は、単一のシステムへの依存が問題になり得るとの認識の広がりを示唆しているのかもしれません。これらの取り組みの有効性は、今後EUVDが技術革新を実現できるかどうかにかかっています。
Flashpointを使って脆弱性リスクを管理する
FlashpointのVulnDBは、世界で最も包括的な独立系脆弱性インテリジェンスプラットフォームです。従来の脆弱性データベースとは異なり、当社の脆弱性調査チームは精査された大量の脆弱性ソースから情報を積極的に収集し、セキュリティチームに以下を提供しています。
- 優先順位付けに役立つ最新の悪用可能性に関する知見
- 商用およびオープンソースのソフトウェアについて、特定のベンダーに依存しない網羅性
- 攻撃ベクター、脅威アクターの行動、TTPなど豊富な脆弱性メタデータをリアルタイムに更新
- 政治的または資金面の混乱に左右されることなく、世界中の情報を網羅
FlashpointはEUVDの進展をこれからも注視し続ける一方で、組織のセキュリティにはコンテキストや悪用可能性に関する知見、脅威ランドスケープの総合的な理解を提供するインテリジェンスが必要だと考えています。これは将来の動向や、長期にわたって変化し得る情勢によって遅延が生じるべきではありません。
外的要因に左右されず、徹底的な調査に基づいていて実用性も高いFlashpointのVIによって、お客様の必要とするインテリジェンスがどのように提供されるのか。今すぐデモをお申込みいただき、その目でお確かめください。
日本でのFlashpointに関するお問い合わせは、弊社マキナレコードにて承っております。
また、マキナレコードではFlashpointの運用をお客様に代わって行う「マネージドインテリジェンスサービス(MIS)」も提供しております。