フランス政府、ロシアによる偽情報キャンペーンを暴く
フランスの省庁やメディアを装った偽サイトがロシア・ウクライナ関連の偽情報を拡散
フランス当局は火曜、ロシアのアクターらが同国の国家機関の支援を得て「フランスに対するデジタルな情報操作キャンペーン」を実施してフランスの民主主義的機構にダメージを与えている、と糾弾した。このキャンペーンは、フランス政府の省庁やメディアを装った偽のWebサイトや偽のソーシャルメディアアカウントを作成し、虚偽の情報を拡散させようとするもの。正規ドメインへのなりすましや偽サイトの作成には、タイポスクワッティングが広く使用されていたという。
キャンペーンは、以下のような虚偽の情報を拡散しようとするものだった:
・対ロシア制裁は効果がなく、ヨーロッパ諸国にとって有害である
・西側諸国は「ロシアフォビック」である
・ウクライナ軍は野蛮で、ネオナチと提携している
・ウクライナからの避難民を受け入れた国々には悪影響がもたらされる
今回このキャンペーンについて詳しく報告したのはフランスの機関「VIGINUM」。VIGINUMは、外国の偽情報等によるデジタル干渉に対抗するために2021年7月に設立された機関。VIGINIUMによれば、なりすましの対象となったメディアにはフランスで特に人気の日刊紙4紙(20ミニュット、ル・モンド、ル・パリジャン、ル・フィガロ)が含まれ、偽サイトでは「少なくとも58記事」が掲載されて、上記のような虚偽のストーリーの拡散が試みられたとのこと。
昨年Metaが特定した偽情報オペレーションの一環か
このキャンペーンは、Metaによって昨年特定された偽情報オペレーションの一環であるとみられるという。このオペレーションでも、英国紙「ガーディアン」やドイツ誌「デア・シュピーゲル」、イタリアのANSA通信などのメディアを装ったロシアのアクターが偽情報を広めようとしていたとされる。
Metaはこの影響力行使キャンペーンの実行者として、ロシアの企業2社(Structura National TechnologyとSocial Design Agency)の名を挙げていた。またMetaによれば、その標的は主にドイツ、フランス、イタリア、ウクライナ、英国で、拡散される情報は主にウクライナ戦争に関するものだったとのこと。
今後はジェネレーティブAIが偽情報キャンペーンに利用され得る?
近年ジェネレーティブAI(生成AI)ツールが目覚ましく進化していることから、この技術が悪用され、かつてないほどの規模で偽情報の作成や拡散がなされていくことへの懸念が広まっている。現に最近、親中国派のプロパガンダを広めようとしているとみられるソーシャルメディアアカウント上に、ディープフェイクで作成されたキャスターがニュースを伝える動画が投稿されていたことが報じられた。大西洋評議会(Digital Forensic Research Lab)の研究者も指摘しているように、ロシアもこうした最新の偽情報キャンペーンにAI技術を活用する可能性は十分にあると考えられる。
(情報源:The Record “France accuses Russians of impersonating French government and media to spread disinformation”)
6月14日:その他のロシア・ウクライナ関連ニュース
米国の議員らが南アフリカへの制裁をバイデン氏に要請、ロシアを援助しているとの疑惑めぐり
New Mail Nigeria – Jun 14 2023 01:30
米国の超党派議員グループはバイデン大統領に対し、南アフリカに対する罰則と、同国開催が予定されていたアフリカ成長機会法(AGOA)閣僚会合の開催地の変更を求めたという。この要請は、南アフリカがロシアに対して武器供与などの援助をしたとされることをめぐってなされたもの。
南アフリカはソ連時代から長きにわたりロシアとの結びつきを持っており、ロシア・ウクライナ戦争においては「中立」の立場であることを表明している。米国もこのスタンスを受け入れていたものの、最近の南アフリカの行動の一部(2月にロシアと中国の軍艦を受け入れて海軍演習を行ったことなど)は中立ではなく「ロシア寄り」だとみなしている様子。
ロシアには「300万人の中国兵」が必要:プーチン氏の操り人形が宣言
「プーチンのTVの鉄の人形」というニックネームを持つテレビ司会者Olga Skabeyeva氏が、ロシアのテレビ番組の中で「2~300万人の中国兵を解散させないでください、それが今必要なものなのです」、「私はベルゴロド地方を見て、私たちにはいかに中国人民解放軍が不足しているかを痛感しています」などと発言したという。
このことからは、プーチンの熱烈な支持者たちでさえ、ウクライナ戦争におけるロシアの戦況が芳しくないという事実を理解しているであろうことが示唆されている。なおベルゴロドとはロシア国内の国境付近の地域で、ここ数週間にわたってウクライナによる反転攻勢の中心地となっている。
中国軍は昨年から何度かロシア軍との合同軍事演習を実施しているものの、現時点で中国がロシアへ兵士を送ろうとしていることを示す兆候はない模様。