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米国土安全保障省の「AI監視」の野望、ハクティビストが入手したデータから一端が明らかに

佐々山 Tacos

佐々山 Tacos

2026.03.16

米国土安全保障省の「AI監視」の野望、ハクティビストが入手したデータから一端が明らかに

Guardian – Sun 15 Mar 2026

ハクティビストが入手し、リークしたとされる米国国土安全保障省(DHS)の内部データにより、DHSのAI監視(サーベイランス)能力の強化に貢献し得るさまざまな企業が、同省から資金提供を受けていることが判明したという。英紙「ガーディアン」が報じた。

 

このデータは、「Department of Peace」と名乗るハクティビストグループがDHSをハッキングし、同省の一部門で民間部門からのテクノロジー調達を担う「Office of Industry Partnership」から盗み出したデータとされる。これはDHSとICE(移民関税執行局)に対して6,000超の民間企業が行った提案に関するデータとされ、監視(サーベイランス)企業のパランティア(Palantir)や防衛請負業者Anduril・L3Harris・Raytheonのほか、マイクロソフトやOracleなどのテクノロジー大手などの名が挙がっているという。このデータはその後非営利の透明性団体「DDoSecrets」に受け渡され、3月1日に公開されている。

 

このデータを構成するのは2つの構造化されたデータベース。1つはOffice of Industry Partnership(OIP)に入札した6,800社以上の企業名簿であり、もう1つはDHSから資金提供を受けた1,400件以上の契約に関する別のデータベースとされる。各契約記録には企業が作成した提案書の要約が含まれており、これにはDHSに提案した技術についての説明が記されていた。ガーディアンは、上述の6,000社すべてがプロジェクトの資金提供を受けたわけではないとしつつ、これらのデータベースを分析することで、DHS関連業務を勝ち取ろうとする民間セクターの意欲や、DHSが検討はしたものの採用に至らなかったテクノロジーなどについて、一端が伺えたと述べている。

 

ガーディアン紙によれば、Office of Industry Partnership(OIP)のプロジェクトには、AI監視(サーベイランス)能力の強化に繋がり得る以下のようなプロジェクトが含まれていたという。

  • 空港での自動監視システム
  • 各政府機関が携帯電話を使って生体情報スキャンを行うことを可能にするアダプタ
  • 米国全土すべての911通報データを集め、「地理空間ヒートマップ」を作成して「事件の傾向を予測」するAIプラットフォーム(予測型警察活動の一形態とみられる)

 

<空港での自動監視システム>

リークされたデータによると、2025年5月7日に4件の契約が締結され、運輸保安局(TSA)の空港保安検査場に向かう乗客を監視するための技術に対して総額69万9,000ドルが提供されたという。4件いずれもが、空港にすでに設置されているCCTVカメラのフィードを分析し、自動で乗客の身体的特徴の分類を行うAI技術に関するもの。これには、以下のような技術が含まれる。

  • Intellisense社のOsscaシステム:人間を検出・追跡し、身体測定値や衣服・靴の種類・アクセサリーを特定することができるシステムで、各機関が「フラグと詳細なレポートを用いてオペレーターに自動的に警告を発し、審査を行う」ために使用可能とされる。同社の提案書によると、想定される商用用途は「小売分析や公共空間の監視」など。
  • Synthetik Applied Technologiesのディープラーニングアルゴリズム:空港のセキュリティチェックポイント付近に設置されたCCTVカメラのストリーム映像の「リアルタイム処理」のために最適化されたアルゴリズムで、「市販の汎用ハードウェアに導入される」予定とされる。AnalyticalAI社とToyon Research Corporationも同様のシステムの開発のためにそれぞれ資金提供を受けた。

 

電子プライバシー情報センター(EPIC)の上級顧問であり、「監視技術・監視プロジェクト(Surveillance Oversight Project)」のディレクターを務めるJeramie Scott氏は、これらの技術に関して、「機能する可能性は極めて低い」と指摘。それだけでなく、「もたらされるリスク、不均衡な影響、何の過ちも犯していない人々に対して国家機関の力を向けさせること、資金の浪費、そしてこれらのツールが民主主義を損なうために悪用される可能性があるといった点で、数々の問題がある」と苦言を呈した。

 

<生体情報スキャン>

ガーディアンによれば、第2次トランプ政権の発足以来、政府機関による携帯電話を使った生体データ収集を可能にするための契約がいくつか締結されているという。2025年5月7日には、こうしたテクノロジーの開発のために3つの契約が発行されており、いずれの技術についてもDHS以外の機関による使用も可能になる旨が約束されている。

  • Idea Mind LLC社の「Vibe」:Vibeは、指紋スキャナーおよび虹彩スキャナーをUSB Cまたはライトニングを介して携帯電話と接続できるアダプタ。同社はこの技術に関して174,464ドルの資金提供を受けたとされる。
  • Intellisense Systemsの「Flow」:Flowは、携帯電話と生体データスキャナーを「単一のユニットとして効果的に手持ちで使用できる」ように設計されたデバイス。同社は174,990ドルを受領している。
  • Integrated Biometricsの「Bios Link」

 

<予測型警察活動>

ガーディアンは、同じく5月7日に、911通報データを処理するAIプラットフォームに関する3件の契約(総額52万4,000ドル)が締結されたと伝えている。このうちの1件は、犯罪パターンの特定と予測が可能であるとみられる。

  • Cassius LLC社の「Cimas(Consolidated Incident Management Analytics System)」:「AIを活用した分析機能と統合された高可用性のデータレイク」を使って、全国の公共安全応答拠点から911通報や事件・事故のデータを収集・匿名化し、「地理空間ヒートマップ」を生成するとともに、AIモデルを用いて「事件・事故の傾向を予測」し、「対応要員に実用的な知見を提供する」技術とされる。

 

予測型警察活動について、ニューヨーク大学法学部ブレナン司法センターは「テック・ウォッシング」と表現。「単にコンピューターやアルゴリズムが人間の判断に取って代わっているように見えるという理由だけで、人種的偏見のある警察手法に客観性があるかのような装いを与えるもの」だと指摘している。なお、ロサンゼルスやシカゴをはじめとする主要な警察署は、2019年から2020年にかけて予測型警察活動を廃止している。

 

EPICのScott氏は、上記のようなAI技術を開発したり利用したりしようとする人々について、「こうした人々はディストピアSF映画を観て、『おお、これいいね!』と思っている」のではないかと感じることが時折あるとコメント。「それはディストピアSFから得るべき教訓ではない。彼らはそこから間違った教訓を引き出しているのだ」と述べ、AIを利用した市民監視が加速傾向にあることに対して危機感を示した。

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