本ブログ記事では、FIFAワールドカップ2026のセキュリティ環境を形成する新たな脅威活動、抗議運動、サイバーリスク、運用上の課題について詳しく解説します。
*本記事は、弊社マキナレコードが提携する米Flashpoint社のブログ記事(2026年6月22日付)を翻訳したものです。
FIFAワールドカップ2026の熱戦が繰り広げられる中、Flashpointのアナリストは絶えず変化する脅威ランドスケープを継続的に監視しており、その対象は物理的セキュリティや市民暴動、サイバー脅威、地政学的動向など多岐にわたります。試合会場や出場チームを標的とする差し迫った脅威について、現時点で信頼に値する兆候は確認されていませんが、前回の評価以降、注目すべき動きがいくつか明らかになっています。
- 大会開催国の米国、カナダ、メキシコで抗議活動が拡大しています。メキシコシティではワールドカップ反対派のデモ参加者がアステカ・スタジアム付近のアクセス道路を封鎖し、開幕関連イベントのさなかに治安部隊と衝突したと報じられました。そのほかにも反FIFA団体や労働争議、住宅問題に関する権利擁護運動、拡大する「No ICE in the Cup(W杯からICEを排除しろ)」キャンペーンなど、さまざまな活動が発生しています。
- イランをめぐる緊張関係が、大会の情勢に引き続き影響を及ぼしています。イラン代表の試合ではデモやピッチへの乱入、サポーターによる政治的メッセージの掲示が発生したほか、渡航制限、ビザ問題、チームの運営上の制約などをめぐる論争も続いています。
- 注目度の高い試合やファンの活動に関連し、依然として高レベルの治安上の懸念が存在します。特にファンゾーンや交通ハブ、その他の警備が手薄な「ソフトターゲット」となり得る場所において、群衆管理上のトラブル、スタジアム周辺の混乱、対立するサポーターグループ間の衝突が発生する可能性について、アナリストによる監視が続けられています。
- 地域レベルにおける運営上の混乱が、大会関連の活動に影響を与えるケースも増えています。最近の例としては、フィラデルフィアで発生したホテル従業員のストライキをはじめ、試合開催都市周辺の交通やホスピタリティ関連業務、来場者の移動に影響を及ぼし得る各都市のデモ活動などが挙げられます。
- ファンを標的としたサイバー犯罪活動も依然として続いています。セキュリティ研究者や法執行機関は、FIFA関連サービスを装った無数の詐欺サイト(偽のチケットポータル・グッズ販売サイト・ストリーミングサービスや、認証情報または個人情報を盗む偽求人サイトなど)について引き続き警告しています。
- またアナリストは、ワールドカップに関連する脅威への関与を主張する、政治的動機を持つサイバー攻撃者や国家の支援を受けた脅威アクターの動向も監視しています。公にされている主張の一部は真偽が未確認のままですが、注目を集めること、混乱を引き起こすこと、あるいは金銭的利益を得ることを目的とする攻撃者にとって、この大会は依然として魅力的なターゲットになっています。
- オンライン上の世論は概ね好意的であり、ワールドカップの雰囲気が話題を集めていますが、チケット価格や商業化、地政学的緊張、そしてソーシャルメディア上で大きな議論を呼ぶファン関連のトラブルなどをめぐる論争も続いています。
現時点での脅威評価
FIFAワールドカップ2026は、過去に行われたどの大会とも違うものになります。
6月11日から7月19日にかけて、史上初めて3か国で共同開催される今大会では、アメリカ・カナダ・メキシコの16都市を舞台に計48チームがしのぎを削ります。スタジアムに足を運ぶファンは500万人を超え、全世界で数十億もの人々を熱狂の渦に巻き込むことが予想されています。
これほどの規模を誇る大会だからこそ、今までとは異なる種類のリスクが発生することになります。このワールドカップは試合会場の各スタジアムだけでなく、交通機関や宿泊施設、ファンフェスティバル、そしてデジタルインフラに至るまで、さまざまな領域で多くの注目を集める世界的イベントなのです。
本稿執筆時点で、Flashpointのアナリストは今大会を標的とした具体的な脅威を特定していません。しかし、過激派によるプロパガンダや地政学的緊張が続いていることを踏まえると、それぞれの開催国全体で警戒を強めるべき状況に変わりはありません。
凝縮された脅威環境
ワールドカップ2026にまつわるリスクは複数の領域で生じます。
物理的なセキュリティ対策、サイバー攻撃、地政学的緊張、社会運動はいずれも同じインフラと観客を対象とし、ある領域での活動が直ちにほかの領域に影響を及ぼす可能性があります。
Flashpointでは、すべての開催国に共通する最も持続的なリスクとして以下を挙げています。
- 現地の環境に不慣れな訪問者を狙った機会犯罪
- 過激思想に基づく行動を含む、単独犯による攻撃的活動
- 過密状態、ファン同士の衝突、管理されていない集会
これらのリスクは、この大会の規模と地理的な広がりによって増幅されます。
市民暴動と抗議活動
ワールドカップは抗議活動の場として頻繁に利用されてきました。
2026年大会に向けて、複数の運動がすでに組織化されています。
- 「Boycott USA 2026」キャンペーンやCODEPINKのような団体が試合会場の移転を要求
- 「50501 Movement」は全国規模のデモを行うため、今大会の注目度を利用することを示唆
- 市民社会団体の連合が移民取締り・監視・市民権に関する懸念を表明
最近の集団形成の動きは、従来の「反FIFA」キャンペーンの枠を超えて拡大しています。公民権団体や労働組合、米ICE(移民・関税執行局)に反対する連合体、そして地域コミュニティ団体などが複数の試合開催都市において、移民の取り締まり、住民の立ち退きへの懸念、労働問題、さらには今大会が社会に及ぼす広範な影響に関連したデモを告知・推進しています。
Flashpointのアナリストは、米国の試合開催都市すべてで抗議活動が行われ、移民政策や労働問題、地政学的緊張に関連するメッセージが発信されると、高い確度で予測しています。
同じくカナダとメキシコでも、環境問題やインフラへの影響、国際紛争に関連した抗議活動が行われると予想されています。
多くのキャンペーンが啓発や提言を行う活動として始まりましたが、その一部は大会関連の活動と連動した組織的なデモや地域イベント、さらには直接的な行動に発展しています。アナリストはカナダにおける反FIFA団体の動きや、メキシコでの組織的な反ワールドカップ活動、そして米国の試合開催都市で拡大する「No ICE in the Cup(W杯からICEを排除しろ)」キャンペーンを注視し続けています。今大会はその規模が大きいことから、スタジアムや交通ハブ、ファンゾーン、その他多くの人が集まる場所などでは、たとえ局地的なデモであっても急激にエスカレートする可能性があります。
物理的セキュリティと群衆リスク
具体的なテロ計画が確認されていなくても、それでリスクが軽減されるわけではありません。
多くの人が集まるイベントは、以下のような者にとって魅力的なターゲットであり続けます。
- 注目を集めたい単独犯
- 機会主義的な犯罪者
- 秩序を乱すファン集団
過激派とつながりのあるメディアが分散的に暴力を扇動するなど、ネット上の投稿においても潜在的な暴力行為への言及が後を断ちません。
アナリストはこれと同時に、地政学的緊張や過激派のプロパガンダ、そして世界的に注目される大規模イベントに付きまとう「ローンオフェンダー」(組織に属さず単独でテロを計画・実行する攻撃者)のリスクといった要因が形成する、より広範な脅威ランドスケープを注視しています。
特定の目的を持つ脅威だけでなく、群衆の行動様式も継続的なリスクとなります。パニックや過密状態、発煙筒・火薬類の使用などが引き金となり、群衆の圧死事故といった危険な状況が瞬時に発生し得ることは、過去のスポーツイベントでも証明されています。
ファン文化は、リスクをさらに高める要因です。ウルトラスやフーリガン集団など組織的なグループはセキュリティチェックを回避するため、暗号化されたメッセージ、偵察(スポッティング)、会場外での会合を利用して連携するケースが増えています。
セキュリティ上の懸念は、従来のサポーター文化の枠を超えて広がっています。一部の組織的なファングループは、連携した偵察や普段着での下見を行い、暗号化された通信手段を利用するだけにとどまらず、衝突の場をスタジアムの警備区域から遠ざけ、バーや交通ハブ、その他の人が集まる場所といった「ソフトターゲット」へ意図的に移すなど、ますます巧妙な戦術を展開するようになっています。
メキシコシティで最近発生したデモは、主要大会の開催中にスタジアム周辺で混乱や警備員との衝突が生じる可能性を浮き彫りにしました。これらのインシデントはテロに関連するものではなく、抗議活動の一環でしたが、局地的な緊張の高まりが瞬時に運営面や群衆管理上の課題に発展し得ることを物語っています。
地政学的緊張と「ハイリスク」試合
大会期間中の安全保障環境は、地政学的要因によって形成されることになります。
米国・イスラエルとイランの緊張関係は、抗議活動や脅威認識の双方に影響を与えることが予想されます。イランのワールドカップ参加、とりわけ米国で試合を行うことについては、すでに多くの議論を呼んでいるだけでなく、渡航に関する懸念の高まりや、警備体制の強化といった反応を引き起こしています。
イランの参加をめぐる議論は、オンライン・オフラインを問わずに今なお大きな注目を集めています。アナリストはシンボルの使用制限や渡航規定に加え、イラン・イスラエル・米国が関与するより広範な地政学的緊張に関連した抗議活動の動向を注視しています。こうした問題は今大会を通じて、市民による抗議活動と警備計画の双方に影響を及ぼすことが予想されます。
この問題は、試合会場の警備にとどまるものではありません。ビザの規定、渡航制限、ディアスポラ(国外在住者)による活動、そしてイランの参加をめぐる継続的な議論は、すでにサポーターや権利擁護団体、政府関係者の間で活発な議論を巻き起こしています。
さらに一部の試合では、以下の理由からリスクが高くなります。
- 歴史的なライバル同士の対戦
- 国家アイデンティティをめぐる緊張
- 特定のファン団体の活動
これらの試合ではスタジアム内だけでなく、サポーターが集まる周辺地域全体でより厳重な監視が必要になります。
拡大するサイバー脅威
ワールドカップは大規模なデジタルイベントでもあります。
Flashpointのアナリストは、進行中のキャンペーンが確認されていないとはいえ、今大会がグローバルインフラのストレステストとして機能すると予測しています。
主なサイバーリスクには、以下のようなものがあります。
- チケット詐欺:FIFA公式プラットフォームを装った偽ドメイン
- フィッシングとソーシャルエンジニアリング:標的はファン、ベンダー、スタッフ
- ランサムウェアとDDoS攻撃:交通システム、スタジアム運営、ホスピタリティネットワークの妨害
- インフラ攻撃:公共システムの脆弱性を悪用
研究者らはすでに、FIFA関連サービスに扮した多くの詐欺ドメインを特定しているほか、認証情報の窃取やアカウント乗っ取りに加え、被害者が購入した正規チケットの転売を目的としたフィッシング攻撃も確認しています。
また、攻撃者は以下の方法により、今大会を収益に結びつけようとすることも予想されます。
- 本物と見間違えるような偽サイトやソーシャルメディアのコンテンツ、通信手段を悪用したAI活用型詐欺キャンペーン
- 居住施設・賃貸物件に関する偽広告
- ライドシェアや交通手段に関する詐欺行為
- スポーツくじの操作と恐喝
アナリストはまた、ワールドカップ関連の脅威への関与を主張する、国家と足並みを揃えたハクティビストグループの動きも注視しています。公にされている主張の一部には裏付けが取れていないものもありますが、全体的な傾向として、政治的動機を持つサイバー攻撃者らが今大会の注目度を利用して自らの主張を拡散したり、関心を集めたり、あるいは大会を支えるインフラを攻撃したりすることに引き続き関心を寄せているという事実が浮き彫りになっています。
デジタルインフラへの軽微な障害でも物理的運営に連鎖的な影響を及ぼし、交通機関の遅延や会場の混雑、その他の安全上の懸念を引き起こす可能性があります。
Flashpointのインテリジェンスオペレーション専門家Ian Grayは、2026年に予定されている大規模な世界的イベントの現実について、「アタックサーフェスはもはや会場だけにとどまらず、イベント全体を取り巻くインフラにまで及んでいる」と指摘しています。TechRadarに掲載された同氏の詳細な分析記事は、こちらからお読みいただけます。
運用上のセキュリティにおける不備
シンプルなリスクほど見落とされやすくなります。
選手やスタッフ、メディア関係者は、プレスパス、セキュリティバッジ、アクセストークンといった身分証の画像をソーシャルメディアに投稿することがよくあります。これらの画像は、身分証の複製やセキュリティ管理の回避に悪用される恐れがあります。
同じく、ファンが以下のような行為を試みることもよくあります。
- チームが宿泊するホテルへの無断立入
- 立入禁止区域への侵入
- 選手との直接的な接触
とりわけ注目度の高い場所では、こうした行為が会場・ホスピタリティ部門のセキュリティチームにさらなる負担をかけます。
スタジアムの外にも広がるリスク
ワールドカップに関連するリスクは、試合会場周辺でのみ発生するわけではありません。警備担当チームは以下にも目を配る必要があります。
- 各チームのベースキャンプとトレーニング施設
- ファンフェスティバルや非公式の集会
- ホテル、観光地、公共交通機関
- 開催国間の国境移動
- 大規模な海外渡航と臨時雇用に伴う人身売買および搾取のリスク増大
- 訪問者が急増する試合開催都市において、住居・労働・地域社会をめぐる緊張の高まり
無許可のファンフェスティバルや突発的な集会は根強い懸念事項となっており、組織的な警備計画がないまま多くの人を集めることも往々にしてあります。
また、猛暑や風雨、山火事のリスク、交通機関の乱れといった環境要因は、大会運営を混乱させ、現地のインフラに負担をかける可能性があります。
大会に向けた準備を
具体的な脅威が確認されていなくても、リスクが低いことにはなりません。
このような規模で行われるイベントでは、物理・サイバー・社会の全領域で継続的な監視が必要です。多くの場合、脅威の兆候は早い段階から以下で表出します。
- オンラインフォーラムやメッセージングプラットフォーム
- 地域的な抗議活動の計画
- 不正なドメイン登録
- 敵対者の行動の変化
- 新しい抗議キャンペーンや社会的動員の取り組み
効果的な準備には、以下の要素が欠かせません。
- オープンソースとクローズドソースの両方において、幅広い範囲を対象とした多言語による監視
- 物理的指標とサイバー指標の相関関係の把握
- 注目度の高い標的と「ソフトターゲット」の可視性を確保
- 官民連携の緊密な協力体制
さまざまな情報プラットフォームで「World Cup/ワールドカップ」「FIFA」「Fan Festival/ファンフェスティバル」といったキーワードや関連ハッシュタグを監視し、状況認識を保つことをFlashpointでは推奨しています。
移民の取り締まりや地政学的緊張、大会開催に必要なコスト、運営体制をめぐる議論や状況が絶えず変化する中、オンライン上での世論と現実世界での動向を常に把握しておくことは、依然として極めて重要です。
キックオフを前に
堅牢な脅威監視アーキテクチャの構築は継続的なプロセスです。試合開催都市や法執行機関は、FIFAワールドカップのような大規模かつ複雑なイベントを行う準備として、より規模の小さな国際大会をリハーサルに当てることが多々あります。
Flashpointの高度な検索機能(幅広いキーワード検索、ワイルドカード演算子、ディープウェブやダークウェブコミュニティの可視化など)を活用することで、企業や組織は大規模イベントに関連する新たなリスクを常に把握できるようになります。スタジアムのインフラからデジタルチケットプラットフォームまで、実用的なインテリジェンスが的確かつタイムリーな意思決定をサポートします。
Flashpointのデモをお申込みいただき、このレベルの可視化と監視が実現できている理由をご確認ください。
日本でのFlashpointに関するお問い合わせは、弊社マキナレコードにて承っております。
また、マキナレコードではFlashpointの運用をお客様に代わって行う「マネージドインテリジェンスサービス(MIS)」も提供しております。













