アンソロピック、AIモデルによる新たな不正アクセス事例を公表
The Register – Wed 09 Sept 2026
アンソロピックが、Claudeモデルによって許可なくサードパーティへの不正なアクセスが行われた新たな事例を公表。同社が開示したこのようなインシデントはこれで4件目となった。いずれのインシデントも同一の第三者評価パートナーIrregular社の構築した環境で発生している。
<すでに公表済みだったインシデント>
- Claude Mythos 5が悪意あるPyPIパッケージをアップロードした事例
- 内部向けのリサーチプロトタイプがサードパーティシステムに侵入した事例
- Claude Opus 4.7が実在の企業を攻撃し、認証情報や本番データを抽出した事例
アンソロピックが9月9日に公開した「An alignment assessment of recent cybersecurity incidents」というタイトルの記事によると、この4件目の問題行動は2026年1月に発生したとされる。同社はすでに公表済みだった上記3件のインシデントを、性能評価期間中にClaudeがインターネットにアクセスできた可能性のある約14万1,000件の記録をスキャンすることによって発見していた。しかしこのスキャンは「エージェントベースの検索に依存していた」ために、当初4件目のインシデントは見逃されてしまっていたという。
2026年1月の問題行動は、サイバー能力を評価するための「Capture The Flag(CTF)」チャレンジを与えられたClaude Opus 4.6の初期バージョンによるもの。Claude Opus 4.6はCTF課題の標的となっていたマシンに対し、別のハードウェアですでに使用されているIPアドレスを割り当てた。これにより標的への接続が不可能となり、課題の解決もできなくなったため、コマンドを使って課題を中止しようとしたものの、評価用ハーネスの設定ミスにより中止することができなかったという。
Claude Opus 4.6は7回にわたって課題の中止を試みたものの、いずれも不可となったことから別の正規の方法で標的へのアクセスを試みた。しかしこれも成功せず、その他の方法を模索することに。そこからサードパーティが所有するマシンにアクセスできることを発見し、そのサードパーティが「CTFの一員である」と判断して、当該マシン内でパスワードが記載されたファイルを見つけると、それを使用してシステムの管理者権限を取得したとされる。
その後、Opus 4.6はさらに認証情報を収集し、このサードパーティ組織に関連する個人の個人情報にアクセスしやすくするために、システム設定を変更。そこでトークン予算を使い果たしてセッションが終了したという。そうでなければ、Opus 4.6はさらなるアクションを行っていた可能性もあるとされる。なおアンソロピックは、インシデントが発覚した時点で影響を受けたサードパーティに通知を行っている。
ただ、モデルがサードパーティへアクセスする前に数回にわたって課題の中止を試みていたことから、アンソロピックはこの事例を先の3件ほど懸念してはいないという。「実際のシステムや人々に害を及ぼす可能性を全く考慮していなかった点は懸念される」とした上で、ここで説明した挙動の多くは、モデルの世代が進むにつれて学習手法が進化したことで、かなり変化している」と同社は述べた。
アンソロピックはこれらの事象を深刻に受け止めているものの、現在のトレーニング手法であれば「これらの事象で観察された具体的なアラインメントの不具合パターンは対処できる可能性が高い」とみているとのこと。
AIによりリソース不足の攻撃者でも国家レベルの規模で活動できるように:Googleが警告
SecurityWeek – September 9, 2026
サイバー犯罪者・国家支援型ハッカーの双方がAIを使ってサイバー攻撃を自動化・スケールアップするケースがますます増えているという。Googleの脅威インテリジェンスグループ(GTIG)が報告した。
企業AIシステムに対する比較的シンプルな敵対的プロンプトインジェクションから始まったAIの不正利用は、今や独自の攻撃用AIシステムの開発・使用にまで発展。企業の側でもAI防御を追加で活用するようになり、同時にアタックサーフェスが増えてもいるとされる。この悪循環は拡大の一途を辿り、収まる気配もない。
2026年を通じてAIの不正利用を追跡してきたGoogleによれば、攻撃の自動化がもたらす全体的な影響は攻撃速度の向上であり、TeamPCP(UNC6780)がその一例となっているという。Googleの研究者たちは、TeamPCPが「AIコーディングチャットボット、プロンプト、および一連のエージェント指示を活用し、6時間足らずで大規模な認証情報収集キャンペーンを計画、構築、実行した」と述べている。このスケールの活動は従来、国家と結びついたグループなど、より大規模で豊富なリソースを持つグループにのみみられるものだった。しかしAIを活用することで、それほどのリソースを持たないグループでも同程度の規模で活動することが可能になっているという。TeamPCPは、AIを攻撃力増強ツールとして使用する多数の脅威グループの一例に過ぎない。
また、金銭的動機で活動するサイバー犯罪グループだけでなく、国家との結びつきを持つアクターらによるAI活用も増加しているとされる。例えば、中国との関連が指摘される脅威アクターBasin Castleは、攻撃ライフサイクルの各段階に生成AIを統合。同グループは、初期段階の偵察において標的のプロファイリングやソーシャルエンジニアリング用のおとりメッセージの草案作成や翻訳、難読化されたカスタムマルウェアの作成、および侵害後のコマンドに関するトラブルシューティングなどにLLMを利用していたとされる。
また、イランとの関連が指摘されるCalanque Ion(APT42)は、標的のメールアドレス特定、OSINT調査の実施、ソーシャルエンジニアリングルアー用のコンテンツ翻訳といった用途でGeminiを含む生成AIを活用。さらに別の中国関連アクターRavine Castle(APT24)は、インテリジェンス収集から攻撃能力の開発、影響工作に至る攻撃ライフサイクル全体でGeminiを使用していたことが観測されているという。このほか北朝鮮関連とされるMidnight Neptune(UNC1069)も、暗号資産窃取を支援するためにライフサイクル全体でAIを統合するケースが増えているとされる。
AIを利用した攻撃の増加に対し、Googleは、関連するプロジェクトやアカウントを特定次第それらを無効化することで、攻撃者の活動を阻止しているほか、自社のモデルが悪用されないよう防御を強化しているという。
それでも、根本的な問題は、AIが脆弱性を見つけ出し、新たなマルウェアやエクスプロイトを開発することに長けているという点にあるとSecurityWeek紙記者は指摘。この状況が続く限り、悪意のある攻撃者は、自らの活動を強化する手段としてAIを活用し続け、Googleのような善意のアクターが悪用阻止を試みようとも脅威アクター側も手を替え品を替え活動を継続するものとみられる。これを踏まえ、AIによってサイバー攻撃の細かな要素は変化・増加し、速度と規模が増大しているものの、基本的なサイバー戦場は変わっておらず、今後も変わらないだろうと同記者は記している。


















