中国語話すサイバー犯罪グループUAT-10147、AIでWebサーバーへの攻撃を自動化
Cyber Insider – August 20, 2026
中国語話者のサイバー犯罪グループ「UAT-10147」が、AI駆動型のツールを使って世界各地の脆弱なWindows・Linux Webサーバーに対する攻撃を自動化しているという。Cisco Talosが8月20日公開のブログ記事の中で報告した。
UAT-10147は、2026年初頭に発見された中国語話者から成るサイバー犯罪グループ。SEO詐欺やデータ窃取といった不法活動を行うため、インターネットに露出したWebサーバーを標的にしているとされる。攻撃には、既知の脆弱性の公開エクスプロイトやオープンソースのオフェンシブセキュリティフレームワーク、カスタムマルウェア、そしてAI生成の高度な攻撃ワークフローが使用されるという。
OPSEC上のミスでディレクトリが公開状態に
Talosは、ある侵害されたマシンが「139.180.197[.]150」でホストされるダウンロードサーバーと通信するのを観測したのちに、UAT-10147の活動を特定したとされる。このIPアドレスをレビューしたTalosは、オープンなディレクトリを発見。このOPSEC上のミスにより、マルウェアやスクリプト、ツール類のほか、170,000件ほどのURLを含む標的リストなどを暴き出すことができたという。
被害者と標的
Talosの調査結果はブラジル、ボリビア、中国、カナダ、ベトナムなどの国々の政府機関・大学・メディア組織・テクノロジー企業・ゲーム会社が攻撃の影響を受けたことを示している。一方でUAT-10147の標的リストに含まれる組織数を国別に見ると、米国(52,496)、インド(8,923)、英国(3,453)、ドイツ(3,412)、オランダ(3,287)がトップ5を占めるとされる。
攻撃の流れ
UAT-10147の一般的な攻撃では、標的Webサイト上でRCEを実行またはその他の手段でサーバーへのアクセスが獲得される。ここで使われる既知の脆弱性には、Zimbra(CVE-2022-27925)やAjaxPro(CVE-2021-23758)、Nacos(CVE-2021-29441、CVE-2021-29442)、Telerik UI(CVE-2019-18935)といった製品のものが含まれるという。その後、自動化されたスクリプトが実行され、SEO詐欺またはデータ窃取用のマルウェアがインストール・デプロイされるほか、代わりにWebシェルがインストールされるケースもあり、この場合UAT-10147はこのWebシェルを使って手動でBadIISマルウェアをセットアップし、追加のバックドア展開を通じて永続性を確立するという。
- Windows IISサーバーの場合:自動化されたスクリプトによって、特権昇格、Microsoft Defenderの除外対象へのIISディレクトリの追加、バックドアの展開、管理者アカウントの作成、およびスケジュールされたタスクによる永続化の確立が行われる。
- Linuxサーバーの場合:Webシェルが展開されるほか、Dirty Pipe(CVE-2022-0847)やBaron Samedit(CVE-2021-3156)といったローカル特権昇格のエクスプロイトが複数使用され、その後さらなるインプラントがインストールされる。
AIの使用
UAT-10147による今回の攻撃キャンペーンを特徴付けているのが、侵害後の活動へいかに根深くAIが統合されているかという点。Talosは、「UAT-10147は、エクスプロイト、偵察、ペイロード生成、検証、および永続化の各ワークフローに、AI駆動型のツールを統合していた」と説明している。同社は、同サイバー犯罪グループが制御するインフラ上でオープンソースのエージェント型ペンテスト/監査ツール「PentestGPT」および「DeepAudit」を発見しているほか、AIによって生成されたドキュメントやPythonスクリプトも確認。これらのドキュメントやスクリプトは、エクスプロイトの検証、トラブルシューティング、書き込み可能なディレクトリの特定、インプラントの展開、Webシェルのインストール、および偵察データの持ち出しなどを行うためのものだという。
Talosは、UAT-10147が、「エージェント型AIシステムを活用して攻撃的手法を大規模に運用する、金銭的動機を持つ新たな種類の侵入オペレーターの1つ」であると、中程度から高い確度で評価。この評価の根拠として、単純なスクリプト作成の支援といった従来の生成AIの用途とは異なり、以下のような用途が見られたことを挙げた。
- エクスプロイトの反復的な改良
- 適応型のトラブルシューティング
- エクスプロイト後の活動の自動化
- エクスプロイトの検証ワークフロー
- 運用ドキュメントの生成
Talosによれば、これは、単にAIを活用してスクリプトを作成する運用から、半自律的な攻撃のオーケストレーションへと、AIの活用フェーズが移行していることを示唆しているという。
カスタムバックドア「SPECTRE」の使用
UAT-10147が使用するペイロードの中でも最も高性能なのが、C言語で書かれたカスタムバックドアのSPECTRE。SPECTREは新たに特定されたクロスプラットフォームのインプラントで、同じく20日公開のTalosの別の記事で詳しく解説されている。これによると、同インプラントはクロスプラットフォームのC2オペレーション、プロセスインジェクション、認証情報の窃取、解析防止対策、およびカーネルレベルのEDR回避機能を統合しており、コモディティ侵入ツールにおける「大きな進化」を示す存在だという。
- Windows版SPECTRE:スクリーンショットの取得、認証情報の窃取、キーロギング、トークンの偽装、プロセスインジェクション、メモリ内での.NET実行、権限昇格など、45種類のコマンドに対応している。また、脆弱性のあるMSIドライバーやDellドライバーを利用したBYOVD攻撃を実行し、悪意ある活動に対する可視性を低下させる性能も有する。
- Linux版SPECTRE:29件のコマンドに対応し、「Specter」と名付けられたカーネルルートキットも併せて展開可能。acpi_pad.koとして偽装されたこのモジュールは、プロセスや自身を隠蔽し、インプラントの権限をrootに昇格させ、起動時に早期に読み込まれるよう設定された偽のhardware-monitor.service systemdユニットを通じて永続化を図ることができる。
Talosは、LinuxルートキットSpecterが部分的にAIアシスタントを使って開発された可能性があるとの考えを示している。その根拠としては、回収されたソースコード内で、異例の構造を持つコメントや手順の説明、また複数の代替実装方法が確認されたことを挙げた。
露出したWebサーバーの保護を
Webサーバーの管理者には、以下の対策を講じることが求められる。
- インターネットに公開されているIISおよびLinuxサーバーへのパッチ適用を優先的に実施する
- 公開されているASP.NETのMachineKeyを定期的に更新し、不要な管理インターフェースを制限する
また、防御担当者には、Microsoft Defenderの予期しない除外設定、不審なスケジュールされたタスクやsystemdサービス、見慣れないカーネルモジュール、および既知の脆弱性を持つドライバの存在について調査することが推奨される。加えて、Webhookサービスや未知のC2インフラへのアウトバウンド接続を監視することも、攻撃者が持続的な潜伏状態を確立する前に、侵害されたサーバーを特定するのに役立つとされる。
なお、Talosの以下のGitHubページではIoCも共有されている。













