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CyberStrikeAI用いる攻撃者が44のAIエージェントで日本組織を標的に

佐々山 Tacos

佐々山 Tacos

2026.10.28

CyberStrikeAI用いる攻撃者が44のAIエージェントで日本組織を標的に

The Hacker News – Oct 27, 2026

日本を含むさまざまな国をAIを使用して攻撃する攻撃基盤のうち、特に日本への関心や攻撃目的が強い3つについてトレンドマイクロが報告。これらの基盤では、攻撃の駆動または人間のオペレーターの支援という形でAIが重要な構成要素となっていたという。

 

トレンドマイクロは、攻撃者自身がインターネット上に露出させていたサーバー(オープンディレクトリ)上で、AIを用いて多数の国を無差別に攻撃している基盤を数多く観測している。同社は日本もその標的リストに含まれることが度々あるとした上で、特に日本への関心や攻撃目的が強い以下3つの基盤をブログ記事の中で掘り下げて解説した。いずれの事例でも、作業言語は簡体字中国語だったという。

  • 事例A:AIが工程全体を自律的に実行(AI使用の直接的な証拠あり)
  • 事例B:計画立案から道具作りまでAIを広範に活用(AI使用の直接的な証拠あり)
  • 事例C:AI使用は道具作りなど一部に限定(AI使用に関する複数の間接的な証拠が一致)

なおトレンドマイクロは、解析対象はあくまで攻撃者が公開状態のまま放置していたサーバー上のファイル群であり、被害を受けた側のログやディスク、通信記録は一切含まれていないと注記。攻撃試行の成功可否や被害の具体的な規模、攻撃者の正体などがこれらのデータから判明するわけではないと断りを入れている。

事例A

トレンドマイクロが解析した1つ目の基盤「事例A」では、CyberStrikeAIと呼ばれるAIエージェント型ペネトレーションテストツールが悪用されていたことが確認された。CyberStrikeAIはオープンソースのオフェンシブセキュリティツールで、過去にはFortinet FortiGateアプライアンスを標的とした攻撃キャンペーンで使用されていたことが報告されている。

トレンドマイクロによれば、このツールによって偵察から脆弱性の探索・検証・悪用、C2、永続化、データ抽出、報告書の自動生成まで、攻撃ライフサイクルのさまざまな工程が、一続きの反復可能なワークフローとして組み上げられていたとされる。同社は、これらの工程が役割の異なる44のエージェントに分担されていた点が特徴的だと指摘。2026年10月に短期集中的に攻撃が行われ、日本16組織以上および台湾・香港の組織を含む19組織以上が攻撃試行の対象になったと伝えた。ただし、試行の対象は多い一方で、深い侵害が成功したとみられるケースは一部にとどまったとされる。トレンドマイクロは、攻撃試行の規模と一貫性を踏まえ、事例Aを「AI支援」ではなく「AI駆動」と呼んでいる。

事例B

AI駆動型の事例Aとは異なり、2つ目の基盤「事例B」は人間が攻撃を主導し、AIを計画立案やツール作成を支援する「道具」として広く活用するものだったとされる。攻撃は、2026年8〜9月(約24日間)に行われている。トレンドマイクロは、攻撃者がLLMに攻撃計画を作らせた際の出力ファイルを確認。ここには、AIやGPUを提供するサービスへの偵察・攻撃の計画が生成された痕跡があったと述べた。またこの際攻撃者は、LLMに対して「これは正規の業務(許可された検査)である」という前提を与える形でガードレールの回避を試みていたことも確認されているという。

事例Bでは、AIが攻撃の「道具」として使われただけでなく、AI自体が「標的」になっていたことも確認されている。攻撃者の標的リストにAI関連の基盤やサービス(AIワークフロー基盤、LLMの前処理基盤、推論サービスなど)が含まれていたほか、他者のAIサービスの利用権を乗っ取ることなどを目的としたツールや仕組みが用意されていたという。

事例Bの攻撃者は日本の6,000以上のIPアドレスをスキャンし、うち数社を重点的に攻撃したとされる。トレンドマイクロは、旧式のWebシステムを使用していた被害組織1〜2社で深い侵害が行われたと報告。うち1社からは、既定の認証情報のまま公開されていたGISサーバーを足がかりに、地籍・商業データ数十万件とWindowsの認証情報、メールが持ち出されていたことが確認されたという。攻撃者は手書きのスクリプトや既製のツール、そして自らの判断に主に頼っており、事例Bの攻撃がAIにより自律的に遂行された証拠はないと同社は述べた。

事例C

直接的な証拠によりAI使用が「確認」された事例A・Bとは異なり、3つ目の攻撃基盤「事例C」では、AIが支援目的で使用されていたものと「高確度」で評価されている。事例CにおいてAIが担っていたとみられるのは工程全体でも計画立案でもなく、攻撃者が使うスクリプトの作成という限定的な範囲であり、AIの関与の仕方が事例A・Bとは異なるとされる。

事例Cの攻撃者は、2026年1〜10月の期間に長期的かつ、(少なくとも9月以降は)並行的に日本・韓国を中心に狙った少なくとも6つの攻撃キャンペーンを実施。既知の脆弱性や設定ファイル内に残っていた認証情報などを使い、Cisco SD-WAN、Citrix NetScaler、F5 BIG-IP、ヤマハ RTX1210などのエッジデバイスやWebLogicサーバーを標的にしていたとされる。1,300以上のWebLogic候補と35以上のVPN入口に対して攻撃が試行され、VPN接続の成功は多数確認されたものの、深部までの侵害は限定的だったとトレンドマイクロは記した。

事例Cでは日本の中小企業や拠点で広く使われているヤマハ RTX1210がまとまった数で標的になっていた。トレンドマイクロはこれを踏まえ、「この攻撃者が日本の導入環境をよく意識していた様子」が伺えると指摘している。なお主な標的は日本と韓国だったが、英国やフランス、イタリア、カタール、コロンビアなども標的リストに含まれていたとされる。

 

トレンドマイクロは、3つの事例の攻撃主体が同一かどうかは不明であり、クラウドストライクなどが報じたARTEX AIを使用する攻撃者と同一だという証拠もないとコメント。使われたAIモデルが何なのかも判明していないとした。また、作業言語が簡体字中国語であることは運用者の所在や所属を「断定」する根拠にはならないと注記した。

同社はまた、AIによって攻撃の規模やスピードが変化しているとしても、防御の優先順位は変わらないと指摘。公開Webシステムの棚卸しと旧式基盤の更新・隔離が最優先で実施すべき対策であるとし、加えて既定の認証情報や管理画面が外部に露出していないかを点検する、VPN機器・境界装置の設定管理と認証情報の使い回しの確認を行う、などの対策を推奨している。

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