ホワイトハウス、住宅用プロキシの出口となっていた可能性
The Register – Thu 05 Nov 2026
米ホワイトハウスのネットワークと紐付くデバイスが、住宅用(レジデンシャル)プロキシネットワークの出口ノードとなっているとみられるとセキュリティ企業Layer3 Intelが報告。これが事実なら、米政府の機微なネットワークがセキュリティリスクに晒されることになるという。
Layer3 Intelは、住宅用プロキシおよび匿名化インターネットの活動を追跡できる公開インターフェース「Residential Proxy Observatory」を最近ローンチ。このツールを通じ、AS2650上で住宅用プロキシ出口ノードの活動を発見したという。AS2650は、ホワイトハウスのネットワークを運用する連邦機関である大統領行政府に登録されたAS番号とされる。
Layer3は、10月5日から11月3日までの間にホワイトハウスのネットワークを経由した236回の外部接続があったと指摘。これらの接続は30日間のうち26日間に6つのアドレスから行われており、28種類の異なる住宅用プロキシサービスがこのネットワークを経由して外部へ接続することが可能な状態だったという。
住宅用プロキシとは、ユーザーの所在地を隠蔽するためのプロキシネットワークで、一般家庭のインターネット接続に関連付けられたIPアドレスが出口ノードとして使用される点が特徴。その多くは正当な目的で使用されているものの、米FBIが3月に警告したように、中にはサイバー犯罪者によって悪用され、サイバー犯罪の実行に利用される住宅用プロキシも存在する。特に、C2インフラの秘匿、フィッシング攻撃の実施、スパムの送信、悪性トラフィックの偽装などに使われるのが一般的だという。
FBIは3月の警告において、以下を通じたシステムハイジャックについてユーザーに注意喚起していた。
- マルウェア:無料のオンラインゲームコンテンツ、無料のスポーツ中継・テレビ番組・映画、(通常は有料の)無料版ソフトウェア、およびtorrent配信コンテンツには、いずれも、デバイスを住宅用プロキシネットワークの一部にしてしまうマルウェアが含まれている可能性がある。
- SDK(ソフトウェア開発キット)パートナーシップ:プロキシサービスはモバイルアプリ開発者に対し、アプリをダウンロードしたユーザー1人につき報酬を支払うことを条件に、自社のSDKをアプリに組み込むよう働きかけている。ユーザーがこうしたアプリをダウンロードし、利用規約に同意すると、組み込まれたSDKがバックグラウンドで動作し、ユーザーのデバイスを経由してプロキシトラフィックをルーティングできるようになる。
- 利用規約に隠された条項があるVPN:無料のVPNサービスは、ユーザーの同意を得ることなく、ユーザーのデバイスを住宅用プロキシネットワークに登録してしまう場合がある。その詳細は多くの場合利用規約の中に隠されているが、ほとんどのユーザーはダウンロード前に利用規約を読まないか、あるいは表現がユーザーにとって理解しにくいものとなっている。
- 不労所得スキーム:プロキシサービスは、ユーザーに「インターネットの帯域幅を提供すれば報酬が得られる」と謳うアプリをダウンロードするよう仕向ける。多くの場合、ユーザーは、犯罪者が自分のインターネット接続を利用してサイバー攻撃を行っていることに気づいていない。
Layer3によると、ホワイトハウスのネットワークにおける住宅用プロキシのアクティビティのほとんどが午後5時〜深夜にかけて発生していたとされる。これについてLayer3は、ホワイトハウスへの訪問者ではなく、職員のいずれかが感染したデバイスを所有していることが示唆されていると指摘。感染は、プロキシSDKを通じて行われた可能性が高いとも述べた。同社は、「これまでの研究により、セキュリティ対策が不十分なプロキシSDKは、内部ネットワークへのアクセスやラテラルムーブメントを可能にしてしまうことが明らかになっている」と説明。「この(ホワイトハウスの)ネットワーク上のSDKに同様の脆弱性が存在する場合、プロキシアクセスを購入した者は誰でも、それを利用して内部システムにアクセスできてしまう可能性がある」と付け加えた。
Layer3は、ホワイトハウスのネットワーク内で何台のマシンが出口ノードとして使われているのかまでは特定していない。一方でセキュリティ企業Synthientによると、ホワイトハウスのネットワーク上には、InfaticaのSDKがインストールされている可能性の高いWindows 10および11デバイスが複数存在するとみられるという。
Infatica社のSDKは、アプリ開発者がアプリユーザーのインターネット接続を活用して収益を得られるようにするもの。開発者はSDKを自社アプリに組み込み、ユーザーのデバイスを住宅用プロキシネットワークの出口ノードとして利用可能にすることで、収益を得ることができる。このソフトウェアがホワイトハウスのネットワークに関連するデバイス上で動作している可能性があることは、深刻なセキュリティ上の懸念を引き起こしているとThe Registerは指摘。その理由として、脆弱なプロキシソフトウェアは、攻撃者に内部システムへの侵入経路を提供してしまう恐れがある点を挙げた。
Layer3によれば、最後にホワイトハウスのネットワークで住宅用プロキシの活動が観測されたのは11月4日夜(現地時間)。これはLayer3がこの件について報告したブログ記事の公開から数時間後に相当するが、その後活動は止まっているという。同社はまた、米国国務省から連絡があり、Layer3が保有するログのコピーの提供を要請されたことも明かしている。一方で、ホワイトハウスはThe Registerからの聞き取りに応じていないとのこと。













